《登山データ》
1日目:別当出合口(標高1260m)⇒砂防新道コース⇒(宿泊)室堂平(標高2450m)
2日目:室堂平(2450m)⇒山頂御前峰(2702m)⇒室堂平(標高2450m)⇒観光新道コース⇒別当出合口(標高1260m)
人生で初めてコーヒーを飲んだのは白山でした。ほろ苦いコーヒーの良さなど分かりもしない小学生でしたが、まっさらな雪の斜面をポコッとくり抜いて、コッフェルで溶かして飲んだことは、印象深い思い出の白山の景色です。
白山という名前は、その名の通り、白い山溪の姿からきているそうです。
石川県、福井県、岐阜県、富山県の4県の広大な地域に広がる白山国立公園内にあり、冬場は日本海からの季節風を受けて深い積雪に覆われます。冬場に積もった雪は豊かな水資源をもたらし、各所に水場があります。夏登山の飲料は大切な装備の一つですが、現地で補充できるのはありがたいですね。
さてコーヒーの味もたしなめる年齢になった?人生2度目の白山登山です。
今回のコースは、別当出合登山口から砂防新道コースを経て白山室堂ビジターセンターに宿泊、翌朝に御前峰でご来光を拝み、観光新道を経て下山します。別当出合センターの広場に着くと、登山口の標識がありました。
【別当出合登山口 奥に鳥居】
奥に見える鳥居をくぐると砂防新道と観光新道の分岐点があり、砂防新道を目指して吊橋を渡ります。この日は薄曇りで見晴らしは良くないものの、霧がかった林道を歩いていると、いよいよ白山登山がスタートしたという気分になります。
登り始めて40分ほどで中飯場、さらに1時間半ほど登ると甚之助避難小屋に到着しました。少し日差しも出てきて、遮る木々もないため暑く感じます。休憩している人でにぎわっているので、標高2000m近くにきたという実感はあまりわきませんが、避難小屋近くに高山植物と思われるお花も咲いていました。
【甚之助避難小屋からの眺め】
ちなみ白山には「ハクサン○○」という名前がつけられた植物が多数存在します。これは古くから白山が植物学者の研究の場であったためで、白山で発見・研究された植物が多いことに由来します。白山と言えば高山植物の宝庫、華麗なお花畑をイメージする人も多いかと思いますが、一方で白山固有の植物はないそうですよ。
甚之助避難小屋から南竜分岐点(2100m)を過ぎると視界を遮るものはなく、見晴らしのよい登山道が続きます。ここから黒ボコ岩までの間はたくさんのお花が咲いていて、高山植物好きにはたまらない場所ですね。
【咲きほこる花たち】
白山を代表する花とも言われるハクサンフウロも咲いています。
【ハクサンフウロ】
景色を楽しみながら登っていくと、ひとくち飲めば3年寿命が延びると言われる延命水の水場がありました。
【延命水の水場】
白山は昔から山岳信仰を代表する山であり、富士山、立山と並んで三霊山とも称されていますが、交通や装備が今ほど発達していない時代は、ここまで到着するのも大変だったでしょう。美しいお花畑の道を経て目にした湧き水に、寿命も延びる心地で口にしたのかもしれませんね。
水場からさらに少し登ると、黒ボコ岩が見えてきました。
【黒ボコ岩】
この岩は白山が噴火した際の火山岩が露出したものです。斜面から突如表出したような巨大な岩を見ていると、白山が活火山であることを感じさせます。この先は五葉坂までなだらかな登山道が続きます。舗装された木道の弥陀ヶ原は、黄色いコバイケソウが咲き、残雪も一部見られます。
【陀ヶ原の登山道】
本日の宿泊先のある室堂平へ到着しました。
【山室堂ビジターセンター】
宿泊先の近くに鳥居があります。
【白山比咩神社奥宮祈祷殿】
白山を御神体とする全国の白山神社の総本宮が白山比咩神社で、こちらは奥宮祈祷殿です。晴れていれば、背後に御前峰も見ることができます。翌朝4時ごろには支度を済ませ、御前峰を目指しました。
暗闇の中、岩場の道を登っていきます。8月半ばで地上は夏の盛りでしょうがそこは2500m超の世界、寒くてご来光を待つまで震えました。この時期の日の入りはだいたい5時前後です。
あいにくの雲であたりの山の峯は見えませんが、雲海の隙間からうっすら輝くご来光(白山はご来光を「お日の出」と呼ぶそう)は、ここまで登ってきたから味わえる光景ですね。
【お日の出】
ほどなく奥宮で宮司を囲んでの、朝の参拝が始まりました。
【御前峰奥宮】
ここは全国の白山神社の中でも最も高いところにあるお宮です。古代から白山は、生活に不可欠な“命の水”を供給してくれる神々の座と考えられていました。やがて山への信仰心は、登拝という形に変化し、山頂に至る登山道が開かれます。早朝に岩場を登ってきた宮司の労に頭が下がります。
この日は雲で見えませんでしたが、晴れていれば御前峰から剣ヶ峰(標高2677m)、大汝峰(標高2684m)を見ることができます。あたりは翠ケ池や千蛇ヶ池など、かつての噴火でできた池が点在し、お花畑が広がる美しい展望も見られるのですが、今回は霧も多いためそのまま下山します。室堂から弥陀ヶ原を経て、黒ボコ岩の分岐点から観光新道を下ります。
【手前ハクサンボウフウ、奥ミヤマクロユリ(観光新道より)】
尾根伝いに下っていくと、白山禅定堂との分岐点があります。ここから急な下りで足場も滑るため、下山に苦労しましたが、無事に別当合の広場まで戻ることができました。
下山して、ふと子供時代に見た山の斜面を覆うほどの雪を今回は見なかったなと思いました。あれは今回行かなかった山頂のお池めぐりコースで見たのか、それとも冬場の雪が少なく、そこまで残らなかったのか。地上での雪は不便なこともありますが、白い山並みは“命の水”をもたらす恵みの姿かもしれませんね。
※参考サイト
『白山ベストガイド(情報ポータルサイト)一般財団法人白山観光協会』
『白山比咩神社公式』
【 この記事を書いている人 】
&Green 公式ライター
20代後半に連れて行ってもらった低山縦走コースで登山の楽しさに目覚める。一時期体調を崩したが、数年前から関東近辺の低山中心に日帰り登山を楽しむ。コーヒーが大好き。人生後半の暮らし方についてトライアンドエラーの日々。