連載開始【 ヒマラヤ徒然草〜雪の盟主を探して〜 】
皆さん、山登りを楽しんでいますでしょうか?&Green山岳ライターの横田です。
有り難いことにこうして&Greenで山岳ライターとして活動の場を設けさせてもらっている私ですが、今回から海外登山に関する山行記録の連載を始める事になりました。
ヒマラヤ徒然草は、毎月地平線会議に通い、休みになっては海外に入り浸っていた頃の話です。
遠征報告書や探検記録ではなく、紀行文としてヒマラヤの山行の様子を出版しようという思いで書いた原稿です。冒険ショーを見せる本ではなく山行中の人間や私の思いにスポットを当てた文章です。この連載は、登山において登攀ルートや方法に重きを置くのではなく、山旅の内容に重きを置くワンゲル育ちの私だからこその内容だと思っております。
なので、「この山に登ったから、これだけ偉大なことだ」などと発信するつもりはありません。出版にならずとも、誕生した原稿たちをこうして世に出せることは凄く嬉しく、とてもありがたいことです。この記事を読んでくださっている方へ一言。
「 私の旅を知って下さってありがとうございます。」
ここからは、この旅が始まったきっかけを少しだけ書いていきます。
ヒマラヤに陶酔した青春
写真:アマ・ダブラム(6856m)エベレストやK2を始めとする8000m峰のルート工作を行うシェルパ曰く、足場だけならK2より難しいとのこと。
登山に没頭した私はその好奇心が収まらず、大学では授業と睡眠時間以外すべての時間をアルバイトに費やし、働いてお金が貯れば山籠もりをするという生活を繰り返していました。その活動範囲は日本だけではとどまらず、海外にまで及び、人生で初めてヒマラヤの地に立ったのが19歳の夏でした。
そこで目にしたのは、日本の山とは比べものにならないほどの大きさを誇る巨大な山々でした。私は、この山々に一目惚れしてしまったのです。
特に、氷雪を纏ったジャンダルムを100倍にしたような姿のアマダブラムを初めて見たときの衝撃は今でも色濃く覚えています。
山屋なら、そのヒマラヤの山々の頂に夢を描くようになるのも至極当然のこと。その夢がいつしか自然に行動へと変わっていき、ヒマラヤ未踏峰の遠征計画を練り始めたのがアマダブラムやエベレストを見た約3ヶ月後のことでした。
同郷の探検部や山岳部が、部を上げて自分と似たような計画をしているという話を小耳に挟んだ当時の私は、その方々に負けじと計画をすすめたのですが、いかんせん一人でやるには限界がありました。それに、日本の山で育った私がヒマラヤのクレバス等の難所をたった一人で安全に突破できる根拠など微塵もありません。
自らの実力と真摯に向き合った結果、日本では誰も知らないような既登の高峰に遠征隊で登ろうという結論に至りました。
その少し後。ミャンマーに居た私は、未踏峰についての調べ物に明け暮れる日々の中で、以前から目をつけていた山があるのですが、その付近に行ったことがあるという男性と偶然会います。
再び、頓挫した未踏峰計画に熱が戻り、更に情報を集めた私は、ヒマラヤの中にあるザンスカール山脈というエリア、KY-2峰という6250mの山にたどり着きました。KY-2は既に登られている山ですが、私が狙った未踏峰はその近くだったのです。
現地調査と山行経験を積むという一石二鳥の山行計画はこうして動き出すことになったのです。
次回より、「ヒマラヤ徒然草〜雪の盟主をさがして〜」始まりです。

&Green 公式ライター/ webクリエイター
幼い頃から自然と親しむことで山の世界に没頭し、大学時代は林学を学ぶ傍らワンゲルに所属。海外トレイル、クライミング、ヒマラヤの高所登山から山釣りまであらゆる手段で山遊びに興じながら株式会社アンドに勤務する。&Green運営・管理を担当。最近は「10秒山辞典」なるものを作成しているとか。