はじめに
&Greenは、アウトドア情報に限らず自然にまつわるさまざまな雑学をお届けしております。このコーナーではハーブにまつわる物語を通してハーブの歴史をお伝えしていきます。ハーブが好きな方はもちろん、ハーブのことを知らない方にも楽しんでいただける内容になっております。
私たちの生活の中にすっかり根付いているハーブ。最近では美容や健康の他、多くの分野で良い効果をもたらすとされメディアでも人気の植物です。そんなハーブの歴史をたどってみると、人間との関わりがとても深い植物のようです。どのような関わりがあったのでしょうか?
ハーブに伝わる知られざる歴史と、その物語「歴史の中のハーブのお話 : 第二話」をのぞいてみましょう。
第二話 : ローマ人が食べ尽くした幻のハーブ
ここはハーブ村です。双子のきょうだいローズちゃんとバジルくんが朝から晩までハーブの研究をしています。今日は、バジルくんが何やら調べものをしているようです。
紀元一世紀、日本では縄文時代にあたる頃、ヨーロッパではローマ帝国が地中海一帯を支配し隆盛を極めていました。日本で映画にもなった漫画の『テルマエ・ロマエ』に描かれたのも、古代ローマと呼ばれるこの時代のことです。ローマ帝国では医学が発展し、解剖といった現代医療に近いことも行われていたのだそうです。それまでおまじないのように使われていたハーブに薬効成分があることもわかってきて、その価値が高まりました。
また、ハーブはローマ料理にも用いられるようになります。元の材料がわからないほど、ハーブや香辛料をふんだんに使って味つけをすることがローマでは美食とされていたようです。繁栄していたローマ帝国には肉体労働に従事しない上流階級の人々が存在し、すでに美食家という立場の人もいました。稀代の美食家と言われたアキピウスは『料理帖』という著書で、コリアンダー、ラベージ、クミン、ミントなどのハーブを使った料理も紹介しています。
【イラスト:たなか鮎子】
その頃使われていたハーブに「ラセルピキウム(ギリシャ名: シルフィウム)」という香り高いハーブがありました。時の有力者は、ラセルピキウムを売るよりも羊の肉を売る方が儲かることから、自生するラセルピキウムを羊たちに食べさせ放牧地にしてしまいました。ハーブの薬効のせいなのか、ラセルピキウムを食べた羊はすぐ眠ってしまう、という記録も残っています。
その結果、ラセルピキウムは絶滅寸前になってしまいます。野生種だったラセルピキウムは、栽培をしようとしてもできなかったのだそうです。高値で取引されるようになったラセルピキウムの最後の一枝は皇帝ネロへ贈られました。暴君と評されたネロは最後の一枝を食べてしまい、ついにはラセルピキウムは絶滅してしまいます。
幻となったラセルピキウムがどんな味だったのか、気になりますよね。ラセルピキウムの学術上の分類は不明ですが、研究によりジャイアントフェンネルの一種なのではないかと考えられています。フェンネルは日本ではあまり有名ではないハーブですが、欧米ではそのまま食べたりサラダに入れて食されているそうです。
フェンネルを食べる機会があったら、ぜひラセルピキウムのことを思い出して味わってみてください。
おわりに
いかがでしたでしょうか?第二話の今回は「ローマ人とハーブのお話」をご紹介しました。
ここ地球には多くの自然が存在しています。私たちはその自然に大きく支えられながら暮らしています。そして自然にはさまざまな言い伝えや歴史が多く語られています。その物語は普段生活をする中では知ることのできないステキな物語ばかりです。さまざまな物語を通して、自然を知る、楽しむきっかけになれたら幸いです。
次回のお話は二月の公開です。第三話「信長とハーブのお話」をお届けします。
記事イラスト:たなか鮎子
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【この記事を書いている人】
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