John Muir Trail -ある夏の私の旅- 【8日目】

トレイル

8月29日【Day8 Halfway point手前 → Evolution Lake 30.7km/194.7km】

この日は朝一で山火事を見た。シカも数頭目の前を横切った。

朝日に照らされたアメリカの山々が美しい。

珍しく早朝にすれ違った、坂の下からの登ってくるハイカーが、「もう少ししたら分岐があって、そこから下に進んでいったらロッジがあるよ。新鮮な野菜が久しぶりに食べられるよ。」と教えてくれた。ありがとう。でも私は前に進む。ジグザグの坂道をずっと下っていくとある分岐に出た。

来た。ついに来た。

John Muir Trailの真ん中までついに歩いた。あまりにも簡素な看板であった。少しザックを置いて休憩しながら、今までの道のりを思い出してみる。まだ朝の光が、木々の中に立ち込めている。誰もいない森の中で、静かに一人ニヤニヤとする。ここまで来たら最後まで行ける気がしてくる。

この日からやっとKings Canyon National Parkに足を踏み入れる。ここは、軽装でハイクを楽しんでいる人が多い。久々の人工の橋にワクワクしながら、川沿いの細い道を進んでいく。この日はどこまでも空が続いているような、飲み込まれそうな美しい青い空であった。川沿いなので涼しい。谷の地形であるので、周りの山がいつも以上に高く見える。

途中でまた、馬にまたがったレンジャーを見る。アメリカの人は毎日元気で人に疲れを見せない。疲れているということもいい思い出にしていると、すれ違う人から教えてもらった。かっこいい。

途中で何回も川を渡る。冷たくて気持ちがいい。少し足のマメにしみてはいたが、そんなことは気にならない。

川辺で、あるおばちゃんが私の旗の「No Resupply」に反応してくれた。もうすぐ食料の補給をするからと、たくさんのナッツとジャーキーを分けてくださった。久しぶりに見るお肉だった。ありがたい。頑張らねばと思った。

湿原になっている大地をサクサクと進んでいく。ジャーキーを食べたら力が出た。テントを張れそうな場所はたくさんあった。だが、まだ太陽は高い。この日も行けるところまで歩いてみようと思った。

途中にレンジャーステーションがあった。人が生活できる人工物だった、久々に見た。誰かが生活している。ソーラーパネルがあって、洗濯した服が外に干してある。そういえばこの後はずっとレンジャーステーションのような、人がいる場所はなかった気がする。

絆創膏があったらもらえるかな?と思い行ってみた。近寄ってみると、ちょうどレンジャーが出てきてくれた。絆創膏ほしいと伝えると、たくさん出してくれた。必要な分持って行っていいと言ってくれた。ありがたかった。自分の今の手持ちの絆創膏では絶対に足りない。少し多めに頂いた。この後のおすすめの幕営地を教えてくれたり、いろいろ話をしてくれた。彼はよく日に焼けていて、なんでも知っていてかっこよかった。

その後もどんどん歩く。真っ白で平らな岩が続く地形には、トレイルから外れないように大きな石が一直線に続いていた。レンジャーがやってくれたのだろうか。おかげで、この辺りでは迷わずに進むことができた。

目の前に、大きな湖が見えた。もう日も傾き始めていたので、この日は、このEvolution Lakeにテントを張った。この湖がトレイルの中で一番好きな湖となった。

水が驚くほど澄んでいた。今まで持ち歩いていた水を捨て、新しく冷たい水をのどに流し込んだ。足を湖の中に入れると、ひんやりとしていて気持ちがよかった。今日もよく歩いた。

テントを立て終わると、許可証の確認をしているレンジャーがテントに来た。許可証はすでによれよれになっていた。おお、全部歩くのか!と、驚かれた。レンジャーは、軽装で、さっそうと歩いていった。

荷物を整理し、シュラフをテントの上で干したり、湖で洗濯をしたりした。終わってから、ほっと肩の力を抜いて休んだ。上空に飛行機が見える。異世界から来た乗り物のような気がする。

周りには誰もいない。スキムミルクを溶かして飲んだり、湖に足を入れてボーっと遠くを眺めたりして過ごした。聞こえる音は、湖のチャプンチャプンという音と、自分の呼吸だけだった。

夕焼けに照らされたシカの親子が、静かに横を通っていった。最近毎日シカにあっている気がする。不思議と、シカに会えてうれしいと思っている自分がいた。

ごはんを食べて、ストレッチをして、横になりながら山に沈んでいく太陽と山のシルエットが美しく残る夕焼けをただじっと眺めた。あぁ、幸せだ、と思った。ここは、ベッドもお風呂も電波もない。水道も電気も人工物もない。何もないことがこんなに幸せだとは、知らなかった。自分が自然に溶け込んでしまうような感覚になりながら、すっと眠りに落ちた。

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