歴史の中のハーブのお話 : 第六話

自然の雑学

はじめに

私たちの生活の中にすっかり根付いているハーブ。最近では美容や健康の他、多くの分野で良い効果をもたらすとされメディアでも人気の植物です。そんなハーブの歴史をたどってみると、人間との関わりがとても深い植物のようです。今回のハーブの歴史のお話は、あの有名な『ラプンツェル』にまつわるお話です。ハーブとの間にどんな歴史が隠されていたのでしょうか。それでは「歴史の中のハーブのお話 : 第六話」をのぞいていきましょう。

第六話 : ラプンツェルの名前の由来のお話

ディズニー映画『塔の上のラプンツェル』(2010年)といえば、長い金髪にピンク色のドレスのラプンツェルが人気を集め、大ヒットしました。ラプンツェルという名前は日本人にも、よくあるものではないことは何となくわかります。めずらしい響きのラプンツェルという名前には、どんな由来があるのでしょうか?

ラプンツェルというのは、実はハーブの一種です。日本では、ノヂシャ(野萵苣)という名前の、知る人ぞ知る野草なのです。もともとは地中海沿岸部が原産ですが、強健な性質で日本の各地にも自生しています。栄養も豊富にあり、ヨーロッパではサラダにしたり肉料理のつけ合わせとして食用にされるのだそうです。

つまり、ラプンツェルという名前は食べられるハーブの名前だったのです。日本で、実は食べられる野草といえば、タンポポがあります。感覚としては「タンポポちゃん」のような雰囲気の名前と言えるでしょう。あるいは、ヨーロッパの一部ではラプンツェルは普通の野菜として食べられているそうなので「レタスちゃん」という語感が近いのかもしれません。

一体なぜ、野草の名前が女の子の名前になったのでしょうか?それは『塔の上のラプンツェル』の原作であるグリム童話を見ていくと、わかってきます。グリム童話『ラプンツェル』の初版本は1812年に発行されました。原作は、子宝に恵まれない夫婦がやっと赤ちゃんを授かるところから始まります。妊娠中の妻は痩せ細り、隣の家に植えられている野菜を目にして、食べたいと言うのです。夫は高い塀を登り、隣の家の野菜を盗みます。

よくないことに隣の家の住民は、魔女でした。魔女に見つかり、恐れをなした夫は盗みの代償に生まれた子どもをあげると約束してしまうのです。約束通りに魔女に奪われた赤ちゃんは、その身と引き替えとなった野菜の名前、ラプンツェルと名づけられたのです。

グリム童話は、改訂される前の初版本が過激だったり残酷なことでも知られていますが、『ラプンツェル』も同様です。初版本には、ラプンツェルの妊娠を示唆する“洋服がきつくなった”という表現や、ラプンツェルの不在を嘆いて塔を飛び降りた王子の“両眼が抜けてしまった”という部分がありました。後に子どもが読むのにふさわしくないということで改訂されています。

何より、ラプンツェルという名前が、両親との仲を引き裂くことになった因縁の野菜の名前であることには驚いてしまいます。

赤ちゃんの名前には希望や愛情を込めることが多いものですが、ラプンツェルの場合はそうではありませんでした。ディズニー映画『ラプンツェル』ではかなりアレンジが加えられ、親しみやすくなっています。

でも、ただ楽しいだけではここまで人気になることはなかったでしょう。グリム童話の残酷な設定が不思議な魅力となり、人々を惹きつけたのかもしれません。

【イラスト:たなか鮎子】

おわりに

いかがでしたでしょうか?第五話の今回は「ラプンツェルとハーブのお話」をご紹介しました。

ここ地球には多くの自然が存在しています。私たちはその自然に大きく支えられながら暮らしています。そして自然にはさまざまな言い伝えや歴史が多く語られています。その物語は普段生活をする中では知ることのできないステキな物語ばかりです。さまざまな物語を通して、自然を知る、楽しむきっかけになれたら幸いです。

次回のお話は5月の公開です。第七話「魔女とハーブのお話」をお届けします。

記事イラスト:たなか鮎子

絵本作家・イラストレーター。絵本に「クリスマスマーケットのふしぎなよる」(講談社)「ルナのたまごさがし」(フレーベル館)「ようせいたちのぼうしのまち」(ベネッセコーポレーション)絵を手がけた本に「はだかのおうさま」(立原えりか文、フレーベル館)「人形使いマリオのお話」(ラフィク・シャミ、徳間書店)、「いっしょに楽しむおはなしのえほん」(髙橋書店)等。「心の哲学空間・ホワイノットの町」の世界観を、個展と短編の物語中心に展開中。
■HP: https://ayukotanaka.com  ■SHOP: https://littlewhynot.stores.jp

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