山登りに彩りを。植物編
皆さん、山登りを楽しんでますか?
ピークハントはもちろん、道中のあれこれも、登山の醍醐味の一つです。
今回のテーマは・・・
\\ 植物の観察について!! //
森の中の植物は非常に多く、種類を上げればキリがありません。 そこで当コラムでは、知っておくと山登りが一段と楽しくなる、そんなあれこれを、あなただけに紹介します!
植物はそれぞれ、地形に対して得意不得意がある
山には、山腹の直登、尾根沿いなど、いろいろな登山ルートがあります。トラバースすることがあれば、沢を詰めることも。知らず知らずのうちに、私たちはさまざまな地形を歩いています。 歩きながら森をよく観察してみると、そのルートごとに、植生の違いがあることに気付きます。
これは、何を意味するのでしょうか?
実は、植物にはそれぞれ、生きていくのを得意とする地形があるのです。例えば、尾根沿いを登っていたとします。 すると、アカマツやツツジなどの樹木が見られるはずです。尾根は風が強い上に、地形の頂点部分にあるため水分も少なく、土壌が乾燥し荒れやすくなります。人間にとっては、泥で滑りにくく歩きやすい地形ですが、植物にとっては劣悪な環境です。
しかし、アカマツは荒れ地に強い樹木ですので、そんな環境でもたくましく自生しています。
江戸時代の絵巻物には、よくアカマツが登場しますが、あれは美しいから描かれている、という訳ではありません。 当時、薪として利用するために林地をたくさん伐開しており、そのせいで荒れ地が増え、アカマツが多かった。という説があるんですよ!アカマツと言えば、マツタケが生えることでも知られています。 現在の北朝鮮では、森林の伐採によってアカマツが増えており、その影響でマツタケが多く取れるのだとか。
このように、沢沿いでは水が好きな樹木、よく土砂崩れが起きる場所では撹乱 に強い植物と、それぞれの場所に自生しているのです。
野生化した意外な植物が自生している。
日常的に私たちの食卓に並ぶ野菜や果物は、樹木を始めとする植物です。彼らの一部には、野生化して林内でひっそりと生きているものが居ます。代表的なものですと、緑茶の原料であるチャノキや、お料理の風味づけで活躍するワサビなどが挙げられます。これらはもともと、集落の生け垣や畑で育てられていたものです。さまざまな過程を経て野生化していったため、特に里山で見かけることが多くあります。そんな身近な植物であっても、山では意外と気が付かないものです。
まさか登山に来て、森の中にお茶っ葉やワサビが生えているとは思いませんよね。気をつけて見渡すと案外、至るところに生えていることが分かりますよ。
たくさんの木が生い茂る森林。でも実は・・・?
家から時間をかけて、やっと登山口に到着! うっそうと立ち並ぶスギやヒノキに感動して、思わず「自然が豊かだ」と感じますよね。しかし、実は日本の森林の40%は人が植えた人工林であることをご存じでしょうか。
しかもそのうち9割以上は、針葉樹林が占めているのです。つまり、登山口でよく見るような、針葉樹が立ち並ぶ光景は、自然の力ではなく、人間が手入れをして木を育てている人工林である可能性が高いということになります。
ちなみに「森」と「林」の違いは、神様が恵みを盛ってくださる「森(もり)」 と、人が生やす「林(はやし)」という語源で分かります。農林水産省でも、自然にできた樹木が密集する場所を「森」、人工的に作られた密集地を「林」と、それぞれ定義しています。
また、山を歩いていると、登山道を中心に左右で全く樹木の様子が違う光景に出くわしますが、これは左右で森の持ち主が違うから。そして、双方の境界が登山道となっているというケースがほとんどです。田畑のあぜ道と一緒ですね。
樹種を知ると、山登りが一段と楽しくなる!!
山には、生活の中でよく目にするものも、たくさん生えています。
マタタビや山葡萄、サルナシにあけび、山椒にクリ。 これらは、山を登っている途中、割と頻繁に出会います。 本格的な山だけではなく、高尾山や奥多摩のような比較的、気軽に登ることが できる山においても、多く見かけます。これを知っていると、山登りがグンっと楽しくなりますよ!
なお、樹木は葉っぱで見分けることができます。フィールドに携行できるサイズの図鑑を持っていき、その葉をよく観察してみるといいでしょう!
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山溪ハンディ図鑑 14 増補改訂 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類
「山溪ハンディ図鑑 14 増補改訂 樹木の葉」は、野生種から植栽種まで、国内 で見られるほとんどの樹種を網羅した、葉っぱの大図鑑。実際の葉をスキャンした鮮明な画像が4,000点以上、使用されており、約1,300 種類の樹木を紹介。その見分け方を、分かりやすく解説しています。
ガイドがあれば、葉をキーに樹種を引くことができ、樹木の種類が分かります。名前が分かると、その木が急にとても近しい存在になりますよ!
一方で、森には必ず持ち主がいること忘れてはいけません。
持ち主は個人や国、地方自治体などさまざま。自分の所有する森でない限り、 登山道の周辺とはいえどむやみに採取するのはおすすめできません。
「山に生えている桜=ヤマザクラ」とは限らない!?
春の山では、よくサクラを見かけますね。登山者の多くは、それらを見て「山桜だ!」と口を揃えます。しかし「ヤマザクラ」は、山に生えるサクラの仲間の一つに過ぎません。
カスミザクラ、オオヤマザクラ、オオシマザクラ、サトザクラ、エドヒガン、 マメザクラ、チョウジザクラなどなど、山地に自生する野生のサクラには本当はたくさんの種類が存在するのです。
それぞれ決まった特徴がありますので、サクラの種類を当てながら登っても楽しいかもしれません。山で見かけた花の種類を知りたい時に、おすすめのガイドブックがこちらです。
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山に咲く花 増補改訂新版 (山溪ハンディ図鑑) 単行本
低山帯から亜高山帯までに自生する野草1202種を2925枚の写真とともに紹介。
「山に咲く花」は、山で見かける花を知りたいあなたに、ピッタリの一冊。 低山帯から亜高山帯までに自生する、1,200種類の野草について、3,000枚近くの写真で紹介されています。
この本を熟読して、ある程度の花の知識を身に着けてから山に行くと、楽しさが倍増しますよ!
木の力はすごい!
木の樹皮の下には、形成層と呼ばれる層があります。 そして樹木は、この形成層の成長によって、外側を一枚一枚、覆っていくよう に、横方向へ太さを増しながら成長していくのです。
木は成長の過程において、周囲に異物があると取り込んでいきます。 その力はものすごく、古戦場では木の中から大昔の鉄砲の玉が出てきたり、神社の大木から藁人形と釘が出てきたりといった話も。
あなたの周りの木にも、何かが隠されているかも知れませんね!
最後に
知っておくと山登りが一段と楽しくなる、植物のあれこれを紹介しました。山登りの目的は、ピークハントだけではありません。
ゆっくりと散策する登山、写真を撮る登山。 人それぞれに、いろんな楽しみ方があるでしょう。そして、周りの植物に注目した、癒やしを求めるライトな登山は、あなたの心の糧となるはず!
図鑑を片手に、生き物の声に耳を傾ける山登り。 きっとあなたの人生を、より豊かなものにしてくれはずです!
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&Green 公式ライター/ webクリエイター
幼い頃から自然と親しむことで山の世界に没頭し、大学時代は林学を学ぶ傍らワンゲルに所属。海外トレイル、クライミング、ヒマラヤの高所登山から山釣りまであらゆる手段で山遊びに興じながら株式会社アンドに勤務する。&Green運営・管理を担当。最近は「10秒山辞典」なるものを作成しているとか。