前回好評だった『登山で出会えるきれいな植物!おすすめの山や見られる界隈を紹介!』に引き続き、登山で見られる山植物をご紹介!
登ることや遠くの景色を見ることに重きを置きがちな山歩きですが、せっかくなら、足元の山植物も楽しんでみましょう。山道のなにげない花が、山特有のものであることも少なくありません。ここでは、山で見られる可憐な春の花や植物を紹介します。
カタクリ
■ 開花時期 : 3月〜4月
■ 生育地域 : 北海道から九州
カタクリは前回も紹介しましたが、もう少し詳しくお伝えします。早春の山で、紫や白の可憐な花を咲かせるカタクリは、鉢植えで育てても開花することは稀です。野山に出かけなければ、なかなかカタクリの姿を見ることはできません。古くは、鱗茎(りんけい=球根のような部分)からとれるデンプンが片栗粉として使われていましたが、カタクリが希少になった今では、原料はジャガイモのデンプンに代わっています。
カタクリは、葉を出しているのも開花の時期だけで、一年の大半は土の中の鱗茎だけになり休眠してしまいます。環境の変化によっては、同じ場所に咲くとも限らず、春になるまではカタクリが咲く場所もわかりません。育てにくさと見つけにくさの両面から、貴重な花として愛されています。
スミレの仲間
■開花時期:3月下旬〜5月
■生育地域:北海道から沖縄
山だけでなく、住宅街の公園や空き地でも見られるスミレ。日本だけでも約50種類以上のスミレがあります。人気の高い花であることから、スミレはかなり細かな分類もされていて、山でスミレを見かけても「〇〇スミレ」と言い当てることはなかなか難しいほどです。たとえ名前がわからなくても、花の姿を楽しむことはできるので、かわいらしい姿を存分に鑑賞してみてください。余裕があれば撮影して、後から名前を調べてみるのもおすすめです。
平地で見かけるスミレは、青みのある紫色の「タチツボスミレ」であることが多いのですが、山では、白や黄色、薄いピンク色など、多種多様なスミレが咲いています。山で見られるスミレは、花は小さめの花が多いのが特徴です。
シャガ
■開花時期:4月〜5月
■生育地域:本州から九州
アヤメ科のシャガは地面より少し高いところに白っぽい花を咲かせ、うっそうと木々の茂る登山道では、ひときわ目立つ存在です。山道に限らず、平地の公園や民家でも咲いていることがあるので、覚えておくと意外なところで発見できます。
原産地の中国では「胡蝶花(こちょうか)」という花の美しさに似合う名前がついていたのですが、日本ではいつしか「シャガ」と呼ばれるようになりました。その理由は、はっきりとわかってはいませんが、ヒオウギという別のアヤメ科の花が、サンスクリット語で「シュリガーラ」という名前だったことから混同され、シャガと呼ばれるようになったようです。
ちなみに学名は「Iris japonica」です。中国原産ですが、かなり古くから日本にあるため“日本のアヤメ”という意味の学名になっています。
ヒトリシズカ
■開花時期:4月〜5月
■生育地域:北海道から九州
ヒトリシズカは、白いブラシ状の形が特徴の花。花びらに見えるものは本当はおしべです。名前の由来は、“一人静かに咲くから?”と思ってしまいますが、実は源義経の愛人「静御前」からきているのだそう。舞の名手だった静御前は、義経と別れたのちに源頼朝の命令により一人、舞を踊ったことが知られています。ヒトリシズカの白くほっそりした様子が、女性が舞うように見えたのかもしれません。
名前からは、一輪で咲く姿を想像しますが、山野では群生する様子も見られます。
フタリシズカというよく似た名前の花は、2本の花穂を咲かせる同じセンリョウ科の花です。
オキナグサ
■開花時期:4月〜5月
■生育地域:北海道から九州
オキナグサは、花びらの外側がふわふわした白い毛で覆われ、チョコレートのような赤茶色をした花。下を向いて咲くその姿は、他の花とは一味ちがって新鮮に映ります。オキナグサという名前は、秋にできる種の様子が翁(おじいさん)のヒゲに似ていることからついたものです。オキナグサはその独特な魅力から山野草ファンに人気で、鉢植えで栽培する人もいます。花の色は、赤茶色の他に、薄い黄色や赤色もあります。かつては日本中でごく普通に見られましたが、今では数が減り、限られた山でしか見られない花となりました。
ワスレナグサ
■開花時期:3月〜6月
■生息地域:北海道、本州、四国
夏の暑さが苦手なことから、園芸品種としては一年草に分類されるワスレナグサ。涼しい山地では、多年草として毎年その姿を見せてくれます。花の色は水色がよく知られ、白やピンクのものもあります。ワスレナグサ(勿忘草)という花の名前は、英語名「forget me not」から。「勿忘草」と書くと、日本古来の花のようですが、原産はヨーロッパです。いつ日本にやってきたかは定かではなく、すでに明治時代には日本に根づいていて詩歌の題材になっていました。
ノジシャ
■開花時期:3月〜4月
■生息地域:日本全土
知る人ぞ知る野草のノヂシャ。葉はヨーロッパでは、レタスのように食されます。ディズニープリンセスの名前の由来となった「ラプンツェル」は、このノヂシャのドイツ名です。高さ40センチほどに成長し、葉や茎が主体で、小さく咲く白い花はあまり目立ちません。見逃してしまいそうな何気ない花だからこそ、見つけられたときの喜びは格別。花の時期が終わると種を残して枯れ、秋冬に発芽してロゼッタ状の葉の姿で越冬し、春に再び花を咲かせます。
ニリンソウ
■開花時期:4月〜5月
■生息地域:北海道〜九州
ニリンソウ(二輪草)は、一本の茎からまず1輪目の花が咲き、そのすぐ後に2輪目の花を咲かせます。2輪の花が連なって咲いている姿から、ニリンソウという名が付いたのですが、1輪だけで咲いていることもあれば、3輪目が咲いていることもあるようです。2つの花が肩を寄せ合うように咲く姿は可憐で、人気の高い花です。湿った土地を好むので、樹木のふもとの日陰になっているようなところでよく見られます。
山植物を見つけるコツ
山植物を上手に見つけるには、前もって下調べをしておくことが大切です。山登りやハイキングに出かけることが決まったら、その地域に生息する植物のことも調べ、写真も見ておくと格段に見つけやすくなります。
最近は、花の名前までは覚えなくても、撮影した画像から名前を割り出してくれるアプリもあります。それでも、予備知識があるとないでは大ちがい。少し知識があることで、山道で目当ての植物が目につきやすくなるのです。
山植物は、種類によっては花が小さめだったり、地面に近いところに花を咲かせていて、見つけにくいこともあります。山植物を存分に楽しみたい場合には、ゆっくりと探す時間がとれるように、余裕をもったスケジュールを立てるとよいでしょう。
山の植物は持ち帰らないこと
私たちが訪れる山やハイキングコースは、国立公園や県立公園などの自然公園に指定されていることも多くあります。自然公園は自然公園法の下に管理され、いっさいの物の持ち出しは禁止されています。
そうでなくても、どんな山も国有地や県有地、私有地にあたり、管理者の許可なく物を持ち去ってはいけません。現実的には、大量に採取して持ち去るようなことがなければ、石や落ち葉を思い出として持ち帰っても、罰せられることはないようです。それでも、生きている山の植物を採ってしまうのは、別の問題があります。
植物の世界では、たくさんの種類が他の生物とも影響しあって生息しています。たとえわずかでも、持ち去ってしまうことで、生態系が崩れるおそれがあります。
また、採取をしなくても、保護区域や植物が群生しているエリアに足を踏み入れることは、せっかく根づいた植物を傷つけてしまうので、やめましょう。
おわりに
春の山植物は、ご紹介した以外にもたくさんあります。花が風に揺れたり、朝露を葉に光らせている様子や、周りの木々と調和して咲いている様子は、実際に行ってみないと感じることはできません。マナーを守って、山だからこそ見られる花々を見つけに出かけてみませんか?
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