春の訪れとともに、街や公園の花壇でかわいらしい姿を見せてくれるチューリップ。春を象徴する花として、卒業式や送別会に欠かせない存在にもなっています。ですが、自宅でチューリップの球根を植えて育てている人はあまり多くはないかもしれません。
球根からチューリップを咲かせることは、実はとても簡単です。
誰でも失敗なく育てられると言われるほどですが、その秘密は「球根」にあります。そこで今回は、チューリップの球根の秘密や植え方、品種をご紹介します。
チューリップの球根の正体は!?
チューリップの球根とは何なのか、改めておさらいしてみましょう。
球根とは、茎や根が肥大した器官です。チューリップをはじめとする球根植物は、この球根に栄養分を蓄えています。もし、世話をする人がいなければ、咲いたチューリップはそのまま土の中に球根としてとどまり、状態のよい球根は翌年また花を咲かせることになります。種と同じようなイメージがあるかもしれませんが、実は球根の正体は「チューリップ本体」なのです。
チューリップが次に芽を出すまで休眠している姿が球根であるといっていいでしょう。それならなぜ、種のように球根を植えるのかといえば、園芸用に品種改良されたチューリップの球根は高温多湿に弱く、土に残しておくと腐ったり病気にかかってしまいやすいからです。
チューリップに種はあるの?
実は、チューリップにも他の植物と同じように種はあるのですが、種まきでチューリップを栽培すると花が咲くまでに5年ほどかかるうえ、素人にはかなりむずかしいと言われます。それで、球根から育てる方法が主流なのです。
球根には、もともと栄養分が蓄えられていますので、適切なやり方で土に植えれば、春には花を咲かせてくれます。種まきの場合に必要な施肥や間引きといった世話も不要です。もし「球根」に苦手意識を感じてしまって敬遠していたら、とてももったいないことです。
球根から育てることは、種まきよりもずっとハードルの低い栽培方法ですので、ぜひトライしてみましょう。
基本的な球根の植え方〈プランターの場合〉
- 鉢底網をセットして鉢底石を薄く敷く。
- ウォータースペース※と球根2個分の高さを残し、培養土を入れる。
- 球根一個分の間隔をあけ、向きを揃えて球根を置いていく。
- ウォータースペースを確保して、培養土を球根の上にかける。
- 鉢底から水が流れ出すまでたっぷりと水をやる。
※ウォータースペース : 水やりの時に土に染み込む前の水や土の流失を防ぐため、鉢の上部に空けておくスペースのこと。水代(みずしろ)とも言う。
球根を植える時期
球根を植える時期は地域によって違います。暑さで球根が傷ませないために、気温が15℃〜10℃ぐらいにまで下がった頃がよいと言われます。たとえば、北海道では10月上旬以降、関東や東海では11月上旬以降、九州では11月下旬以降です。地域差がありいつとは言えないため、その地域で【紅葉が見頃になる頃】が、チューリップを植える時期の目安にされています。
花が咲くまで…
球根は、冬の寒さに当たることで、春に芽吹く性質があるため、寒くてもプランターを屋内に入れる必要はありません。屋外では、降雨だけでも水分は足りますが、ベランダや軒下では土の表面が白っぽく乾いたら水やりをしましょう。
花が咲いたら…
花が完全に開いた後は、種子ができるのを防ぐために花を摘みとります。種子ができるのにエネルギーが使われると、球根には栄養が蓄えられなくなってしまうからです。チューリップの花を室内でも楽しみたいときには、咲いたらすぐに根元からカットするのがおすすめです。この方法では、チューリップを切り花として長く楽しむことができ、球根に栄養を蓄えることもできます。花がない状態のチューリップは、葉だけは残して、しばらく置く必要があります。これは、光合成をさせて、球根へ養分を送りこむためです。見た目は少しかわいそうに見えますが、葉が黄色く枯れるまではそのままにしておきましょう。
球根の保管方法
葉が黄色く枯れたら、暑くなる前に球根を土から取り出します。このことを「球根の掘り上げ」といいます。球根の掘り上げは、夏の高温多湿で球根を傷ませないために必要な作業です。掘り上げた球根は、ネットなどに入れて風通しの良い場所で、秋の植えつけまで保管します。
チューリップの品種
続いて、豊富にあるチューリップの品種から、咲き方別にいくつかご紹介します。生産者の方々の愛情が伝わってくるような名前も素敵です。
一重咲き
誰もがイメージするチューリップがこの一重咲きでしょう。すっきりした花姿で、日を追うごとに花が開いていく姿も見ることができます
品種:ピンクインプレッション
八重咲き
花びらが幾重にも重なっているので、ボリュームがあります。一重咲きのように花の中が見えるほど開くことはなく、最初の印象のまま咲き続けます。
品種:ブルーダイヤモンド
ユリ咲き
花びらの先端が尖り、ユリのように外側に開いていることから「ユリ咲き」といいます。都会的で洗練されたイメージの咲き方です。
品種:バレリーナ
フリンジ咲き
あまり見かけることのないめずらしい咲き方です。花びらの縁がフリンジのようになっていて、個性的なチューリップです。花びらにボリュームがあるため開ききることがなく、最初の姿を保って咲きます。
品種:ネグリジェ
クラウン咲き
新しく出てきた咲き方で、王冠のような丸みを持ちながら先端は少し外側にねじれて咲きます。球根も多くは出回っていませんが、これから増えてくると思われます。
品種:ホワイトリバースター
以上、咲き方別にチューリップの品種をご紹介しました。世界中で愛されるチューリップは、なんと5000種類以上の園芸品種があるのだそうです。
チューリップは品種によって植え方が異なるということはありません。植えつける時期は、品種により違うことがあるので、購入のときに確認しましょう。
早く植えて早く咲く品種には【早咲き】と明記されています。掘り上げと植えつけををするとによって、同じ品種を翌年も咲かせることができるので、気に入った品種を選びましょう。
その他品種
原種のチューリップ
咲き方の分類でいうと「一重咲き」ですが、園芸品種ではない原種のチューリップというものがあります。掘り上げをせずに、そのまま土の中に置いていても翌年に咲いてくれるチューリップもあります。品種改良をしていない「原種のチューリップ」です。見慣れた園芸用のチューリップとはちがった味わいがあります。
おわりに
一度覚えたら、むずかしくないチューリップの球根の植えつけ。球根は、種まきよりずっと簡単で、栄養剤入りの種のようなものなので、植えないのはもったいないぐらいです。
品種によって色や咲き方はさまざまで、チューリップの画像や品種ごとにつけられた名前を見ているだけでも楽しいぐらいです。しっかりお世話をすれば、毎年花を咲かせてくれるチューリップ。
毎年咲かせてみたくなるような、お気に入りの品種を見つけてみてはいかがでしょうか?
【 この記事を書いている人 】

&Greenは、あらゆるアウトドアを等身大でお届けするメディアサイトです。自然にまつわる様々な知識や情報を多様面からお届け!ここでしか知ることのできない内容が盛り沢山です。学生から大人まで、幅広い方々に楽しんでいただけます。ありのままの自然を知り、地球を大切に楽しみましょう♪