世界的アウトレジャー【登山 】の歴史:登山は誰が始めたのか?

登山

街に出れば登山用品店があり、ホームセンターに行けばアウトドアグッズが販売されています。どこにでも登山用品が置かれるようになったこの時代。「登山」は長い歴史を経て本当に多くの人に親しまれるレジャーとなりました。

趣味として楽しむ人はもちろん、より高みを目指して極限の環境に挑むことで生計をたてる登山家、さらには学術的なアプローチの仕方をする探検登山とその活動はいまや多岐にわたります。

ではこの登山とは、いったい誰が始めてどのようにして現在に至るのでしょうか?今回は世界的な登山に着目してその流れを追っていきます。

「登山」の歴史

その①:山登りには“登山”と“それ以外”がある

登山とは言ってしまえば山を登るだけの行為。しかし、生活をするために山を登る行為が登山だ、というと何か違和感があります。では一体何が違うのか・・・これは思想の有無ではないかと考えられます。人間にとって、狩りや移動、気分的なものも、そもそも生活の一部として山に登るという行為自体は馴染み深いものであり、そこに起源を見出すことは出来ません。しかし、趣味としての登山にはアルピニズムという概念がルーツの一つとして存在します。これは、山に登るという行為は誰が始めたかは分からない、しかし「登山」と呼ばれる山登りには思想が発端となっている。ということです。では早速、その歴史を見てみましょう。

その②:登山の発祥

思想を紐付けた山登りの行為という原点に着目してみると、イタリアの詩人であるペトラルカが発端とされる「山に登るという行為そのものに喜びを見出す」というヨーロッパの近代精神が挙げられるようです。一方、数ある登山を示す活動記録の中にも、ペトラルカよりはるか昔の紀元前218年のハンニバルによるピレネー越えや、紀元前125年のハドリアヌス帝のエトナ火山(ご来光目的)の登山のような古いものも存在します。しかしこれらは現代登山と直接的な関係を持つわけではないようです。今の流れを振り返ってみていると、ペトラルカが思想を結び付けなければ山登りは散歩と同義に近いものとなっていたかもしれませんね。面白いです。

その③:アルプス黄金時代と山岳会の登場

1300年代にペトラルカによって開かれた「山に登るのは楽しいことらしい」という思想は、時を経て1700年代後半のモンブラン初登頂にて近代登山の幕開けを起こします。これを皮切りに、さらに1800年代にはアルプスでの登山が人気となり、「アルプス黄金時代」と呼ばれる時代が到来します。また、この時アルプスで登山を行っていたのは地元のフランス人やスイス人ではなくイギリス人が多かったようです。こうして登山のメインであったイギリス人の中ではイギリス山岳会が設立されることとなります。これが世界で初めて生まれた山岳会です。そしてこれが今の私たちの登山の様式に直結することとなります。ケルン、クランポン、ヒュッテ、などなど・・この地域の言葉がそのまま用語になっているのもこの影響なのです。

その④:アルピニズムの登場、そして舞台はヒマラヤへ。

こうして登山が盛んになっていく中で、難易度の高いルートよりも、より高みを求めるといった思想が生まれてきます。これが後にアルピニズムと称されるようになる思想です。場所によっては、ある種の精神性を伴った崇高な思想といったように捉えられることもありますが、実際には他との差別化を図るために既存の単語に精神性を加えていったという経緯があるという説もあります。また、その時代に生まれたのではなく、後に名称が付けられたという言われもあります。(ともかく、このアルピニズムという概念の内容に関しては断定的な表現をすると思わぬ軋轢の原因となりかねないことから曖昧な表現にしておきます)。さて、高みを目指した登山家たちはアルプスの山々を登られたあと、ヒマラヤを目指します。こうしてまた年月が経過し、各国の登山家がヒマラヤに探検に来る時代が訪れました。ちなみに、あの有名な「そこに山があるから」という言葉は、この時代の登山家ジョージ・マロリーの発言によって生まれました。

エベレスト(8848m)

ヒマラヤ登山が大盛りあがりを迎えたヒマラヤ黄金の時代、登山はすでに日本でもメジャーなものとなっていました。そこから数十年。今、第4次登山ブームと呼ばれるようになるかもしれない程の新規流入が起きています。登山はすっかり民衆の趣味となりましたが、昔のような思想は今や見る影もなくなりつつあります。これから先、登山はどの様な変貌を遂げていくのでしょうか?特に最近では、それまでの登山とは全く違う起源を持つ「ロングトレイル」を発祥とする要素が多く流入してきています(ウルトラライトなど)。これはあくまで個人的な意見ですが、最近登山を始めた者と昔から登山をしている者との間には大きな壁があるように感じるのはこのせいでしょう。2つが今後調和するのか、分離するのか、ここは観察していきたいポイントです。

最後に

「誰が山に登り始めたのか」というポイントは以下の2つでしょう。

  • 人間が生きている中で行う「山に登る」という行為の中でたまたま思想が結び付けられ、趣味として発展したものが登山。
  • 登山はアルプスを中心としたヨーロッパに起源を持つ。

普段何気なく登る山も、はるか昔の詩人の存在の有無でまた違ったものになっていたのかもしれません。また、こうした背景はあくまで一説を取り上げているに過ぎず、登山を趣味とする一環として登山史をとり入れてみると、より楽しさが増すかもしれませんね。

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