関東の名所―吾妻峡―

アウトドア

交通データ
交通機関利用:岩島駅(JR吾妻線)⇒十二沢パーキング(ハイキングコース入口)まで約1時間弱⇒小蓮莱(見晴台)まで40分程度
駐車場:十二沢パーキング(普通車27台)、溪谷パーキング(普通車14台)、道の駅「あがつま溪」(普通車80台)

紅葉の写真を探していたら、2016年に訪れた吾妻溪谷の写真が出てきました。この時は11月初旬に友人と訪れ、景勝に惹かれて、その翌週に夫ともツーリングで訪れています。当時はまだ建設中だった八ッ場ダムと、それに関連する施設・新しい道路と自然との対比がとても印象的だったのを覚えています。八ッ場ダムは2020年の3月に完成、運行を開始しました。今回は完成した八ッ場ダムと共に、6年前の吾妻溪谷の記憶をたどってみたいと思います。

吾妻渓谷はふれあい大橋から新蓬莱まで約2.5キロに渡る渓谷で、美しい景勝地として「関東の耶馬峡」とも呼ばれてきました。昭和10年に国の名勝として指定、ご当地かるたとして有名な「上毛かるた」にも取り上げられています。(読み札は「耶馬渓しのぐ吾妻峡」)6年ぶりに訪れた吾妻溪谷周辺は、八ッ場ダムの完成と共に大きく変化していました。日本一短かった樽沢トンネルを含む旧吾妻線は、廃線を利用して自転車型トロッコで渓谷沿いを楽しめるコースになっていました。

【6年前の樽沢トンネル】

渓谷の景色を楽しむには遊歩道を利用する旧吾妻線沿いのコースと、上流にある八ッ場台ダムを見渡すことができる小蓮莱(見晴台)がある未舗装のコースの2通りあります。今回は見晴台を目指すコースをご紹介します。ハイキングコースから近い十二沢パーキングは、吾妻線の岩島駅から徒歩で約1時間弱です。(紅葉の時期に臨時のシャトルバスが出ている場合あり。詳細は公式HPなどでご確認ください)

【十二沢パーキング】

今回は紅葉にはまだ早い夏の面影が残る渓谷沿いを歩きます。ハイキングコースですが、ところどころ鎖場もあり、案内板では登山用の靴が推奨されています。軽く汗をかきながら、緩やかなアップダウンの道を進みます。途中の鹿飛橋付近から見る光景は、溪谷中最も川幅が狭まったところで、「八丁暗がり」とも呼ばれ、水の迫力や光のコントラストに心奪われます。比較のため6年前の写真と比べてみます。

【鹿飛橋付近から(2022年9月10日)】

【鹿飛橋付近から(2016年11月13日)】

【鹿飛橋付近からの吾妻峡】

紅葉台を過ぎたあたりから、木立が途切れると右手に大蓬莱が見えてきます。中国の蓬莱山を思わせるところからこの名前がきているそうです。

【9月の大蓬莱】

【11月の大蓬莱】

小蓮莱(見晴台)まではハイキングコース入口から40分ほど、高台に上がるまで最後は木道のきつい登りがあります。汗をかきながら登りきると、木立の間から八ッ場ダムが見えました。眼下にはきらきらとした水、真正面には貯水のための大きな壁が見えます。しばらく上がった息を整えながら目の前の光景と対峙しました。

【見晴台より(2016年11月13日)】

【見晴台より(2022年9月10日)】

見晴台のあるこの場所は小蓬莱と呼ばれ、先程見えた大蓬莱と合わせて新蓬莱と呼ばれています。6年前にはなかっただろう案内板には、高さ555mのこの場所は、八ッ場ダムを唯一真正面の高台から見えるところと書かれています。目の前の八ッ場ダム天端は高さ586mで、ここより31m高いことが分かります。この小蓬莱はかつて、吾妻川の川床であったそうです。岩盤が固く、渓流が数十万年かけても侵食することができず、円錐状に取り残され、現在の姿になりました。現在の水面はここより100m下にあり、川底で削られた丸い石がこの場所に残ります。そんな説明文を読みながらダムと対峙していると、自然がつくった時の経過と、人がつくった時の経過、それが結び合って今、ここから見えている景色なのだと感慨深かったです。

八ッ場ダム近くに新しくできた資料館を見学しました。完成に至るまでの集落の人たちの葛藤の歴史や、本来のダムの予定地が今の位置より600m下流にあったことなど紹介されています。エレベーターを利用して八ッ場もみじ橋まで下り、放流した水を間近に見ました。飛び出した水が龍のようで迫力があり、見どころのある場所でした。

※エレベーター利用時間確認連絡先(管理事務所):0279-83-2560

勢いよく放出された水は向かいの壁にぶつかって舞い上がり、ちょうど今、登ってきた小蓬莱に添えるような形で虹を作っていました。個人的な意見ですが、見晴台と放流を見ることのできる橋付近、双方の景色が一対なのではと思います。お時間ありましたら両方を訪れてみてほしいです。

【放流される水】

【虹と小蓬莱】

帰ってから八ッ場あがつま湖となった付近の写真の昔と今の写真を見比べました。どちらも穏やかな光景に見え、不思議な気がしました。吾妻峡は10月半ば頃から紅葉の見頃を迎えます。

【八ッ場大橋付近(2016年)】

【八ッ場大橋付近(2022年)】

 

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