クリスマスリースはなぜ飾るの?知られざる由来とは?

自然

毎年、クリスマスリースが飾られているのを目にすると、今年ももうすぐクリスマスという気分が高まるものです。クリスマスリースといえば幸せそのものというイメージがありますが、本来の意味はどんなものだったのでしょうか?今回は、クリスマスリースの起源や最近のクリスマスリースをご紹介します。

クリスマスリースの起源

イエス・キリストの生誕祭であるクリスマス。クリスマスリースも、キリスト教に関連しているイメージがありますが、由来は別だと言われています。その起源は、紀元前の古代ギリシャ・ローマ時代にまでさかのぼります。

古代ギリシャでは、神に捧げるものとして、花や植物をひもでつないだガーランドが生まれます。同じ頃、頭につける花冠も生まれています。オリンピックの勝者に贈られる月桂樹の冠は有名ですが、競技の覇者だけでなく知識のある者にも冠は贈られ、神々の像にもつけられたのだそうです。

その後に続くローマ時代には、ガーランド作りは商業としても発展します。また、冠よりも大きな飾るためのリースが一般の人たちにまで広がりました。ガーランドに使われるのと同じスミレやバラなどのリースもあったようです。

例えば、結婚や出産を知らせるためのリースや宴会用のリース、船出の際に掲げるリースなど、暮らしの中のさまざまな場面でリースは飾られたのだそうです。欧米では今でも、葬儀や婚礼に際して、リースが用いられます。リースは、特別クリスマス用のものではなく、暮らしの中の大切な場面で使われるものだったのです。

クリスマスリースの誕生秘話

古代ローマ人たちが独自の文化として楽しんでいたリース。時代が中世になり、キリスト教会の支配の下では異教のものとして禁止されました。その後、キリスト教会の影響力が揺るぎないものになるにつれ、リースも使用が認められるようになったのだそうです。古代ギリシャから続くリースの文化は、一時的に禁止されても滅びることはありませんでした。その後、リースはクリスマスを彩るアイテムとして発展していくことになります。

クリスマスリースの素材といえば、ヒイラギの緑の葉や赤い実が知られていますが、これはイエス・キリストにちなんだものです。イエス・キリストは最期にいばらの冠を身につけていたので、いばらに似た尖った葉をもつヒイラギと赤い血を示す赤い実が使われているのだそうです。

クリスマスはイエス・キリストの誕生日のはずなのに、なぜ亡くなったときを象徴しているのかというと、キリスト教では、イエス・キリストの死は、大変重い意味を持つからです。イエス・キリストは何の罪もなかったにもかかわらず、すべての人間の罪を代わりに背負って処刑をされたとされています。そのことへの深い敬意がクリスマスリースにもこめられているのです。

ヒイラギ以外のリースの素材は?

ヒイラギの葉と実は、キリストの死という重みのあるモチーフであるということがわかりました。しかし、ヒイラギがクリスマスリースに欠かせない素材なのかといえばそうでもないようです。もともとクリスマスリースには、厳密なルールなどはなく、素材にはモミの木なども使われてきました。たしかに今のように流通が活発ではない頃には、手に入る植物でリースを作るしかありませんから、決まりもなかったのかもしれません。ヒイラギ以外に使われる素材や丸い形にも意味がこめられています。

モミの木

聖母マリアがイエスを身ごもっていたときに、その子がいずれ人々の救世主となることを知ったユダヤ王は自身の栄華が終わることを恐れて、マリアを捕らえようとしました。マリアと婚約者のヨセフが、ユダヤ王の使いから逃亡したときに「モミの木」は重要な役割を果たしました。マリアとヨセフは実をつけたとき「モミの木」に身を隠して難を逃れたと伝えられています。このことから、モミの木は“勇者のモミ”と呼ばれ、クリスマスリースにも用いられるようになりました。ただ、モミはヤニが多く扱いにくいため、代わりにヒバスギの枝が使われることもあります。

松ぼっくり

松ぼっくりは、上記のように聖母マリアを守った「モミの木」の実の代用品として使われています。「モミの木」にも松ぼっくりとそっくりの実がなるのですが、モミの実は松ぼっくりとはちがってバラバラになって落ちます。そのため、同じマツ科のよく似た松ぼっくりの実が、クリスマスリースの素材として使われるようになりました。

リースの形

リースはたまたま円形をしているのではなく、その円の形に大切な意味があります。途切れることなく続く形に「終わりがない」「永遠」という意味があるのだそうです。ヨーロッパでは、リースは婚礼や葬儀にも使われていますが、幸せを願う気持ちや亡くなった人をしのぶ想いがリースにこめられているのです。クリスマスリースの場合には、イエス・キリストの生誕という特別な日に向けて飾りますので、「終わりのない永遠の神の愛」という意味がこめられていると伝えられています。素材や形にこれだけの意味があるからこそ、クリスマスリースにはなぜか心惹かれてしまうのかもしれません。

最近のクリスマスリースの傾向は?

最近のクリスマスリースは、一言で言えば「自由」です。手作りでリース作りを楽しんでいる方もたくさんいるようです。SNSでは、ドライフラワー、毛糸玉、リボン、クリスマスツリー用のオーナメントなど、どんなものでもリースにしている画像がアップされています。最近のものはどちらかといえば、デコラティブなものより少ない材料でシンプルに作ったものが多い傾向があります。自宅で育てたグリーンや手芸の材料など、あるものを生かして作るのが、時代の流れに合ったクリスマスリースなのかもしれません。

おわりに

クリスマスが近くなると当たり前のように飾っているクリスマスリースには、思いのほか長い歴史と深い意味があることがわかりました。日本では、クリスマスは必ずしもキリスト教を意味するものではありませんが、リースにこめられた「永遠の神の愛」は、生かされていることへの感謝と通じるものがあるのかもしれません。自分らしいクリスマスリースを探したり、身近にある材料でリースを手作りしてみると、よりいっそうクリスマスが楽しみになるのではないでしょうか。

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