平日ソロ登山-棒ノ折山-

アウトドア

登山データ
さわらびの湯バス停(252m)⇒登山口=滝ノ平尾根=岩茸石(728m)⇒権次入峠(893m)⇒棒ノ折山(棒ノ峰)(969m)⇒権次入峠⇒岩茸石=白谷沢⇒白谷橋(322m)=有馬ダム=さわらびの湯バス停

最近、「ホーム・マウンテン」という言葉があることを知りました。住居から近く、思いついたときにすぐアクセス出来る馴染みの山といった意味合いでしょうか。体力づくりに、景色の移り変わりを味わいに、となかなか素敵な言葉だなと思います。自分の「ホーム・マウンテン」はどこだろうなんて考えながら、今回は漫画『ヤマノススメ』の舞台にもなった棒ノ折山(棒ノ峰)に平日ひとりで行くことにしました。奥武蔵と奥多摩の間にある1,000mにも満たない山ですが、初級者でも沢登りを楽しめるとあって人気のスポットです。

棒ノ折山は3年ほど前に一度訪れています。3年前は登りを沢コース、滝ノ平尾根を下りました。沢コースは左右に迫る岩壁の間の水流の上を歩く変化に富んだコースです。初級者でも楽しめるコースですが、滑りやすく足場の悪い個所もあり、滑落を避けるため、登りを沢コース、下りを滝ノ平尾根にすることが一般的のようです。ですが今回は、ここ数日安定した天候であったこと、平日で人も少ないと予測して、下りを沢コースにして臨むことにしました。

自宅からは車で1時間半くらいの距離にある棒ノ折山に向かいます。8時前に到着し、さわらびの湯バス停奥にある駐車場に車を停めると、3年前にはなかったノーラ名栗という新しい施設ができていました。北欧式のアウトドアが楽しめる場所とあって、夏休みと思しき家族連れでにぎわっています。きれいなトイレも併設されていて、登山客も利用できます。ノーラ名栗から川側に降り、入間川にかかる橋を渡ります。この奥の民家の横を進むと「棒ノ峰」の看板が…いよいよスタートです。

【棒ノ折山へ】

滝ノ平尾根コースに入ると、背の高い杉林の山道が続きます。今朝、こちらを登りに使う人はいなかったのか、ところどころ行く手に蜘蛛の巣がきらめきます。木の根のはった登りが続き、次第に息が上がります。暑さもあいまって心拍数がおさまらず、衣類を脱いだり、水分を摂取したりと試してみるもののなかなかペースが掴めません。流れる汗をぬぐいながら、ソロ登山は自分の呼吸で歩けるようでいて、実はなかなか難しいと思った瞬間でした。自分の状態を確かめるように歩いては休みを繰り返し、苦戦した最初の1時間でした。そのうち早くも山頂から降りてくる人達とぽつぽつとすれ違います。人の気配に少し不安も解消され、一汗かいた体も軽く、次第に気力がわいてきました。

滝ノ平尾根コースは3度、林道を横断する箇所があります。岩茸石のある分岐点に到着しました。白谷沢コースに関する案内板があります。冬期や雨による増水時には避けるようにという注意喚起が書かれています。

【林道を横切る】

【岩茸石の分岐点】

岩茸石を超えると木製の階段の道がありますが、現在は倒壊の恐れがあり使用禁止になっています。ここから権次入(ゴンジリ)峠を経て山頂を目指します。最初ほどではありませんが、体力的にもきつい最後の登りです。

頂上に着きました。滝ノ平尾根の山道の記憶はほとんどなかったのに、頂上の景色には見覚えがありました。生い茂る夏の木々であまり展望はありませんが、ひらけた山頂付近はベンチがいくつかあり、何人かの人が休憩を取っています。

【山頂風景】

休憩して体力・気力もばっちり、権次入峠、岩茸石を経て、沢コースへ向かいます。岩茸石からしばらく緩やかで整備された道を進み、林道を横断する道に出ました。ここはかつて東屋があったそうですが、今は木材のベンチが数点設置されています。いよいよ沢コースへの道に入ります。

【沢コースへ】

徐々にわきを流れていた渓流を横断するような道にぶつかります。かろうじて向こう岸と繋がる石の上を歩いていると、次第に川そのものが道となっていくように感じられます。足運びを間違えば危険が伴う中、ほどよく聞こえる水音が、心地よい集中力を促してくれます。目で進路を探り、一瞬ごとに判断しながら全身を動かし、集中力が自然との一体感を高めてくれます。

【渓流の景色】

このような狭い岩壁に挟まれた谷はゴルジュと呼ばれるそうです。

【岩壁に挟まれた道】

沢下りを満喫し、白谷橋側の登山口に出ました。目の前に有馬ダムが見えます。こちら付近にも駐車場が2個所あり、白谷沢の登山口から近くアクセスできます。ここから20分ほど歩いて、さわらびの湯の駐車場まで向かいました。有馬ダムを横切る橋の上では写真を撮る人が多くいました。トンボがたくさん飛んでいて、少し秋の気配も感じられました。

冒頭の話に戻りますが、皆さんは「ホーム・マウンテン」はお持ちですか?今回の平日ソロ登山では、登りの苦しさや鎖場のスリル、渓流の心地よさなど、山を登る喜びと共に、沢山の気付きがありました。登山が日常から切り離されたものではなく、日常の続きであるように生活を整えたいとも感じました。皆さんの「ホーム・マウンテン」にまつわるお話もぜひ聞いてみたいです。

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