はじめに
私たちの生活の中にすっかり根付いているハーブ。最近では美容や健康の他、多くの分野で良い効果をもたらすとされメディアでも人気の植物です。そんなハーブの歴史をたどってみると、人間との関わりがとても深い植物のようです。どのような関わりがあったのでしょうか?今回のお話は、織田信長とハーブのお話です!信長とハーブには一体どんなつながりがあったのでしょうか?それでは「歴史の中のハーブのお話 : 第三話」をのぞいていきましょう。
第三話 : 信長のつくったハーブ園!?
滋賀県にそびえる登山客にも人気の伊吹山。登山道から琵琶湖が眺められることでも知られています。日本百名山や花の百名山にも選ばれている伊吹山には、なぜか日本にここだけにしか咲かない、しかもヨーロッパ原産の花が見られるのです。それだけを聞くと、観光のために最近になって植えたのかな?と思ってしまいますが、伊吹山の植物には驚くような歴史が隠されているのです。
「なぜ、日本では伊吹山にしかないヨーロッパ原産の植物があるのか?」その理由は、500年も前にさかのぼります。当時この一帯を統治していたのは、あの織田信長でした。信長は、いち早く鉄砲を手に入れたことでもわかる通り、海外の文化を取り入れることに熱心でした。他の戦国大名が禁止したキリスト教の布教も認めていましたし、「弥彦」という黒人の家臣がいたという記録も残っています。
信長は、ポルトガル人宣教師のフランソワー・カブラルから「人の病を治すには薬が必要であること、それには薬草の栽培が必要であること」を進言されます。当時のヨーロッパでは、病気を治す目的でハーブが使われ、流行していたのです。さっそく信長は、伊吹山にハーブ園を作らせます。宣教師フランソワー・カブラルは信長の命令で、東京ドーム10個分もの土地に3000種類もの薬草や草花を植えたといいます。医学が発達しておらず、多くの戦国武将がガンなどの大病に倒れるなか、信長は病気知らずでした。その理由の一つは「ハーブ」だったのかもしれません。
信長が明智光秀により謀殺された“本能寺の変”の後、信長のハーブ園は失われてしまいました。その正確な場所の記録さえ残されてはいません。しかし、キバナノレンリソウ、イブキノエンドウ、イブキカモジグサの3種類が、日本では伊吹山の山麓にしか自生しない植物として今も脈々と残っているのです。
【イラスト:たなか鮎子】
信長はエピソードには事欠かない人物なので、ハーブ園のことはあまり語られてこなかったようですが、 2017年にNHK・BSの『偉人たちの健康診断』という番組で取り上げられ、話題となりました。この地には今では、米原市伊吹薬草の里文化センターが建てられ、薬草湯にも入ることのできる観光スポットになっています。
500年も前に信長によって作られたハーブ園の植物の一部が生き続けているとは、なんともロマンにあふれた感慨深いお話です。
おわりに
いかがでしたでしょうか?第三話の今回は「信長とハーブのお話」をご紹介しました。
ここ地球には多くの自然が存在しています。私たちはその自然に大きく支えられながら暮らしています。そして自然にはさまざまな言い伝えや歴史が多く語られています。その物語は普段生活をする中では知ることのできないステキな物語ばかりです。さまざまな物語を通して、自然を知る、楽しむきっかけになれたら幸いです。
次回のお話は3月の公開です。第四話「4人の泥棒とハーブのお話」をお届けします。
記事イラスト:たなか鮎子
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【この記事を書いている人】
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