8月21日 はじまりの場所へ
起きたら朝だった。
色々なところで旅をしていると、どんなところでも深く眠れるようになるらしい。アメリカのサンフランシスコの朝のアラームは、清掃員の笑い声だった。朝日が空港内にも入り込み、無機質なコンクリートの壁を照らしている。
昨日周りにいた他の旅人たちはもう出発してしまったようだ。思いっきり伸びをして、ボーっとアメリカの朝を眺める。そうだ、いま私はアメリカにいるのだ。
のろのろと荷物をまとめて空港内を散策してみる。そういえば前にご飯を食べたのはいつだったっけ、と思い、朝ご飯を探す。パンケーキを注文し、コンセントがあるところで充電しながらゆったりと食べる。さすがアメリカ。きれいで、おいしい。
行きたいところは、空港内にある乗り物に乗ればだいたい行ける、という旅の経験をもとに、とりあえず空港から出る乗り物の乗り場に足を向ける。
券売機のシステムに戸惑ったが、何とか券を買って電車に乗り込む。乗客が少かったので席に荷物を置いて足を伸ばす。アメリカの太陽がまぶしい。車窓から見える大地がとにかく広い。
来てしまった、アメリカに。時差ボケなのか、徐々に眠くなる感覚をこらえた。日本では嗅いだことのないにおいがする。少し硬い椅子に大きな窓。すべてが新鮮。
まるで何も知らない子供時代に戻ったように胸が高鳴る。
飛行機にはガス缶を持ち込むことはできなかったので、サンフランシスコのアウトドアショップのREIに足を向ける。
駅を出ると、テレビで見たことのある広くて大きな町が広がっていた。アメリカらしい。車も人も売り物も、全てが大きい。日本人の自分は小人になったような感覚になった。壁に描かれたアート、おしゃれなカフェ、広い道。そして素晴らしい晴天にウキウキと足を進める。
REIに入った瞬間、アメリカはアウトドア大国だ!と感じた。所狭しと並んだ商品に、見たことのない道具、自分の身長を遥かに超えた高い位置の商品に大きな商品棚。いったいどうやって取るんだ?
大きなザックを持った日本人の女性がワクワクしながら店内を眺める光景は、海外の方から見ればさぞかし異様だっただろう。
ここでは、ガス缶2つとマッチを購入。その後、ガソリンスタンドでライターも購入。これでトレイルに必要なものはあと許可証だけとなった。
日本で予約していた2019/08/22 0:50発のグレイハウンドバスへと向かった。その途中、あちらこちらにカフェやバー、出店に路上ライブと文化の街だと思った。
頭の中で思い描いていたアメリカが目の前にある。
きれいな空気の大きな町がついに私の目の前にあることに感動をしていた。私が旅をする理由の一つかもしれない。
バスの時間まで余裕がったので、橋が見えるおしゃれなカフェでゆっくりしてみた。店内が空いていたので4人席を広々と使わせてもらった。
そういえば、Caravanの曲の歌詞に、「ブラックコーヒー飲みほして」というフレーズがあった事を思い出しブラックコーヒーを飲んでみる。
オークランドの海や街行く人をボーっと眺めたり、景色などの写真を撮ったりと、ホッとしたひとときを過ごす。トレイルの地図を広げて眺めたりもしたが、ここまで来たら考えるよりも行動してみようと思い地図を閉じた。
アメリカの空は広くてきれいなブルー。吸い込まれそうだ。旅が楽しみにしている自分と、不安な自分との中で格闘しているのを感じた。
それはそれでよい。
うまくいけば、明日にはトレイルのスタート地点に立てる。
夕日を眺めていたら、徐々に暗くなってきた。
荷物を持ったままどこかに行くのも面倒だ。すぐに夜になるだろうからバス停に移動しようと思い腰を上げる。
ふとカフェの玄関を振り返ると、ここのカフェの営業時間は一時間前までだった。見ず知らずの大きなザックを持った外国人のために一時間何も言わずにいてくれた。胸の中がホワッと温かくなった。
サンフランシスコにまた来たらここに来よう。
ありがとう。
夕暮れの中、フラフラと散歩をしながらバス停に向かう。バス停の施設の扉を開けると、広い空間が広がっていた。奥ではスタッフたちが、何やら話しながら大笑いしている。日本にはない、こうゆうラフさが好きだ。
早くチェックインさせてくれた。
バスが来るまで待とう。長時間待つのは慣れている。Wi-Fiを使わせてくれた。充電するところがあるのは、さすがアメリカ。好きな動画を見てのんびり過ごす。
バスに乗る人、見送る人、迎えに来た人、バスを待つまでに何人の人を見送っただろう。
外はもう真っ暗になっていた。途中でホームレスの人が話しかけてきたり、予約がないからと帰らされたグループがいたりもした。
早くハイカーに会いたくなってきた。そして、早くトレイルのスタート地点に立ちたい。
椅子に座るのも飽きてきので床に座って待つ。ここが最後の充電スポットなので全てのバッテリーの充電をフルにした。次にコンセントを見ることができるのは、歩き終わった後だ。
やっと私の乗るバスが来た。
ついにトレイルのスタート地点である、Yosemite国立公園に向けての移動が始まった。
&Green公式ライター
大学時代に初めて一人で海外に旅に出たのを機に、息をするようにバックパッカースタイルの旅を繰り返す。大自然の中に身を置いているのが好きで、休日はいつも登山、ロングトレイル、釣りなどの地球遊び。おかげで肌は真っ黒焦げ。次なる旅を日々企み中。