インド・デリーの風
朝から雨だった。舗装のあまい道路に雨粒が落ち、町中がボタボタと音を立てていた。
街にインド料理の「ドーサ」を探しに出かけた。たくさん歩いて、やっと見つけた。もうすぐインドを出てしまう。食べれるうちにお気に入りの食べ物は食べたかった。
その後、デリーの古本屋に行った。世界各国の古本屋をめぐるのが好きだ。前回の旅の中で見つけた本を読み終わったら、次の旅の中で見つけた本屋に売りに行く。売った場所で新しい本を買う。売るときに自分の名前、旅の感想をつらつらと書き残しておくのが好きだ。いつか世界の誰かがその本を手に取ってくれた時、自分の旅がまた始まるような気がしている。デリーの古本屋の本は横積みだった。雨の中、少し湿った本を手に取るのがなんとも幸せな時間だった。この本はどこの国の誰が読んだのだろうか。
デリーの街中を散歩した。都会だった。今まで経由してきたどの街とも雰囲気が違った。地下鉄にも乗ってみた。雨はあがったり降ったりしていた。傘を持っていなかったので、雨が降ると木の下でのんびりした。
変わりゆくインド、変わらずに時が止まったインド。同じ国にも全く異なったインドが混在しているのだと思った。
宿を出るとき、壁に書置きをしてきた。また、世界の片隅に自分という存在を残した。デリーの滞在は短かった。今までの街の刺激が強すぎて、どこか退屈に感じてしまった。新天地を目指して旅を続けることにした。次はネパールに入国することにした。まずはゴラクプルに向かい、スノウリ国境からネパールに入国する予定を立てた。
デリーを発ったのは夜だった。駅でウロウロしていると、どこに並べばいいのか親切に教えてくれた。そして三度目の寝台列車に乗った。珍しく時間通りに出発した。
翌朝、ゴラクプルに到着した。眠い目をこすりながらトイレを探す。なかなか見当たらない。トイレは工事中だった。
その後、スノウリ国境行きのバスに乗り込んだ。バスは満員だった。自分の荷物を椅子にして座った。窓ガラスはガタガタで道も砂埃をあげていた。途中何度も寝落ちした。気づいたらスノウリ国境まで来ていた。
スノウリ国境は物売りの人と行きかう人でごった返していた。砂埃が目に染みた。旅の疲れで客引きがうるさく感じた。ベッドで眠りたかった。ここから人生で二度目のネパールへ入国する。インドはお別れだ。たくさん感情を揺さぶられ、たくさん考えさせられ、たくさん刺激を与えられ、自分の中の善と悪の区別もなくしてしまったインドに別れを告げ、国境のゲートをくぐった。
&Green公式ライター
大学時代に初めて一人で海外に旅に出たのを機に、息をするようにバックパッカースタイルの旅を繰り返す。大自然の中に身を置いているのが好きで、休日はいつも登山、ロングトレイル、釣りなどの地球遊び。おかげで肌は真っ黒焦げ。次なる旅を日々企み中。