John Muir Trail -ある夏の私の旅- 【5日目】

トレイル

8月26日【Day5 Gladys LakeとVivian Lakeの間 → Duck Pass Trail  28.2km/113.5km】     

この日、すれ違ったハイカーにこんな言葉をもらった。

「Keep going!!」 

ハイカーたちの合言葉だと思う。

日が出る前に出発した。Reds Meadowに着くまで、長い長い山の中。下りの道を跳ねるように下る。

心地よい気温と心地よい湿度の森だった。わずかに生き物の気配がする、静かな森を下った。

この日も川をよく渡った。川を渡ると、冷たい水が心地よくて、背筋がシャキッとする。特に、朝日を浴びながら渡る川は格別だった。

耳をよくすまし、鳥や木々の声を聴きながら前に進んだ。

途中でレンジャーが乗る何頭もの馬とすれちがった。馬があげた粉塵の中を進んだ。

Reds Meadowで会った女の人が、もうトレイルを離脱するからと、ドライフルーツ、ナッツ、一食分のご飯などをくれた。

ありがたい。ドライフルーツは、後に私の重要な行動食となった。

Reds Meadowを越えた後の、水のない8.6kmが本当につらかった。

日差しを遮るものは何もない。その間の水はすべて背負っていたのでとても重い。

だらだらとずっと登り、一度道を間違えたと思って引き返してしまったので余計に多く歩いた。

足が重い。まだかまだかとボーっとしながら足を進めた。同じような風景が何度も続き、本当は進んでいないのではないかという錯覚さえ覚えた。

やっと水場に着いた。ザックを下ろし、靴下を脱いだ。この時、両足のマメが破れていることに気が付いた。しかも、かなり深くえぐれていた。

破れている靴下をはいていたため、当然だ。しかし、歩いているときには、歩くことに夢中になっていて気が付かなかった。ザックを下ろしたあと、痛くて歩くのが苦痛だった。

ここからの距離を、自分が持ってきた量の絆創膏だけでは絶対に足りない。まずいと思い、少し離れたところにいた二人組に声をかけてみた。

本当にいい方々だった。アルコールやテープ、塗り薬まで塗ってくれた。おかげで次の日はどうにか歩けた。色々な話をした。親が自分の国で心配している、という同じような境遇で、大声でずっと話した。

当に楽しい瞬間だった。お礼にお味噌汁をあげた。あなたは無補給だから大丈夫だよと言ってくれたが、どうしても受け取ってほしかった。

靴下が破れたので、手ぬぐいをちぎって持ってきていた針と糸で補強した。

相棒の麦わら帽子も、シュラフもマットも干してみた。

夕飯にはお茶漬けを食べた。ご飯を食べると、あっという間に体が温かくなってきて、幸せな気分になる。ご飯は大事だ。

お湯で戻せるタイプのご飯を持ってきて本当に良かったと思った。

この日の夜、寝つきが悪かった。風が強かった。テントをもっと固定しておけばよかった。

しかし、外に出る勇気は出なかった。あれは夢なのか、わからない。真夜中に、テント外の私の頭の上で、何か大きい動物の足音と、人の靴の音が聞こえた。

何かがいたのかもしれない。でもなぜ靴の音が聞こえたのか。風のせいか。疲れていたのかもしれない。

これは夢なのか?私は今、起きているのか?一人きりが長い夜だった。

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