はじめに
私たちの生活の中にすっかり根付いているハーブ。最近では美容や健康の他、多くの分野で良い効果をもたらすとされメディアでも人気の植物です。そんなハーブの歴史をたどってみると、人間との関わりがとても深い植物のようです。今回のお話は日本で最も古いとされてるハーブのお話です。ハーブと言えば海外のイメージが強いですが、日本最古のハーブとはどんなハーブなのでしょうか。それでは「歴史の中のハーブのお話 : 第五話」をのぞいていきましょう。
第五話 :日本最古のハーブは?
日本には欧米のように古くからのハーブはないだろう、と思っている方もいるかもしれません。たしかに日本にハーブティーが入ってきたのは、ほんの30年ほど前だという情報もあります。
しかし、洋風ハーブでなく日本古来の薬草に目を向ければ、日本にも大昔からのハーブがあるのです。
日本最古のハーブは、欧米ハーブの起源と同じメソポタミア文明の頃、縄文時代に使われていたとされています。気になるハーブの種類は、サンショウです。他にシソやエゴマなども見つかっていますが、特にサンショウは日本各地で回数も多く出土されていて、人々の暮らしには身近なものであったことがうかがえます。
残念ながら、具体的にサンショウがどのように食べられていたのかは明らかになっていません。縄文時代より年月を重ね、弥生時代になって編纂された『魏志倭人伝』(3世紀ごろの中国の歴史書の中の日本人に関する記述)には、日本人のサンショウの食べ方に関する記載があります。そこには、“サンショウ”や“ミョウガ”は日本でも栽培されているが、調味料として用いることはないためか美味しさは知らない”ということが書かれています。
なぜ、日本の文化を中国の歴史書から読み解くのかといえば、当時の日本には文字がなかったからです。サンショウがどのように使われていたのか、わずかな情報を頼りに想像するしかありません。サンショウの実といえば、醤油漬けなど味付けしたものであっても、かなりピリッとした味がします。【山椒小粒でぴりりと辛い】と称されるのもうなずける味です。縄文時代の人にとって、サンショウは驚くほど刺激的な味だったことでしょう。
もしかしたら、縄文の人々は、いざというときの薬のようにサンショウを使っていたのかもしれません。『魏志倭人伝』で“美味しさを知らない”と書かれてしまったのは少し残念ですが、それでも避けてしまうのではなく食べていたことに人間の知恵を感じます。
【イラスト:たなか鮎子】
サンショウには、胃腸の機能促進、冷え性改善、神経痛の緩和などの効能があります。昔の人々もきっと経験でその価値を知っていて、利用していたのはないでしょうか。
太古の昔と同じサンショウが今もしっかり日本に息づいていることに、感銘を受けずにはいられません。
おわりに
いかがでしたでしょうか?第五話の今回は「日本最古のハーブのお話」をご紹介しました。
ここ地球には多くの自然が存在しています。私たちはその自然に大きく支えられながら暮らしています。そして自然にはさまざまな言い伝えや歴史が多く語られています。その物語は普段生活をする中では知ることのできないステキな物語ばかりです。さまざまな物語を通して、自然を知る、楽しむきっかけになれたら幸いです。
次回のお話は5月の公開です。第六話「ラプンツェルとハーブのお話」をお届けします。
記事イラスト:たなか鮎子
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【この記事を書いている人】
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