2021/9/27 Day3 グリーンパル光高荘→野々海高原テントサイト
朝4:30に起きた。部屋の窓を開けると昨日の悪天候が嘘だったかのような星空が広がっていた。キッチンを使わせてもらい、トレイルでよく食べる「味噌ソーメン」を食べる。お味噌汁の元と乾麺を持っていけば、すぐに完成する、軽量なのにエネルギー補給ができる食べ物だ。少し眠い目をこすりながらのんびり準備をする。
6:00前に出発した。ヒーターの前で乾かしていたので、すべてからっからに乾いていた。夜明け前の青白い晴天の空が広がっていた。管理人のおじいさんに見送っていただいた。本当にお世話になった。お別れはとても寂しかったが、この日もまた歩きを開始した。
グリーンパルからの急な上り坂を登り、トレイルに戻ってきた。昨日とは景色が全く違い、木々の間から晴天のきれいな空が見えた。
牧峠に出た。トレイルを少しそれると展望スポットがあるようなので足を向けた。素晴らしい景色が広がっていた。日本海や新潟の街、そして佐渡島や広がる山脈も見渡すことができた。静かな、日差しも心地よい朝だった。ザックを下ろし、ふと肩の力を抜いた。これから歩いていく場所がはるか向こうの方に見えた。ここは、上昇気流が発生しやすく、猛禽類を見ることができる場所らしい。一人、少し強面のおじさんがカメラを向けて静かに待っていた。こんにちは、と声をかけてみると案外優しい方で、全国猛禽類を追いかけて写真を撮っているのだと教えてくれた。そこから話が盛り上がり、私もトレイルを歩いていることや今の生活について色々話した。とても気さくで元気なおじさんだった。
その後もずんずん進んだ。ぬかるんでいる場所は一部あったがそれほど気にせずに歩くことができた。
以前ご縁があって鍋倉高原・森の家でお世話になる機会があり、そこで知り合った有紀子さんから「花立山に着いたらすぐ下が森の家だから叫んでね」と言われたので5回ほどヤッホーと叫んでみた。聞こえたら面白い。気持ちがよくてルンルン気分で進む。コースタイムが全くあてにならないほど早く進んでいるようだ。途中、獣のにおいがする場所が何か所かあったので手をたたいたり口笛を吹いたりしながら進んだ。
幻の池で休憩をした。ブナの森の中でいきなり出てくる、まさに幻の池だった。周りには誰もおらず、静かな場所だった。木漏れ日が気持ちよかった。
木のトンネルのような森の中を進むと、伏野峠に出た。ここも車が通れる舗装路だった。小さなボックスがおいてあったので何かと思ったら、トレイルエンジェルさんがおいてくださったお水がたくさん入っていた。メッセージも書いてあり、ほんわかした気分になった。ここでも少し休憩し、いきなり始まる急登を登り始めた。途中、かなりお年を召したおじいさんに会った。話してみると、健康のために少しだけ歩いているそうだ。トレイルはハイカーだけのものではなく、地域の方々からも利用されているのだとわかった。それにしても近くにこのような素敵な道があったらとてもいいなと思う。私なら毎日散歩してしまいそうだ。
その先は分岐が多くあったが、地図と道標のおかげで迷わずに進むことができた。維持管理してくださっている方々には頭が上がらない。
長野県最北地点もトレイル上にある。嬉しくなって南を向いて写真を撮ってみた。ぬかるんだ道で滑り、ズボンを真っ黒にした。せっかく乾いた靴もまた水が染み込んできてしまった。
お昼くらいに深坂峠に到着した。予定時間より3時間も早く着いてしまった。最高な景色だった。ここも新潟県の街並みや日本海が見渡せた。峠は芝生になっていたのでザックを下ろし、靴を脱いで大の字になって寝ころんだ。ここからこの日のテントサイトまでは15分で着く。ここで先に休んでいた山岳会のおばさんたちに出会った。6人くらいで歩いていて、彼らと随分と話し込んだ。最後になんと山盛りのぶどうとミカンをくださった。フルーツを欲していた私にとってごちそうであり、ありがたくいただいた。
彼らに言われた言葉がとても心に残っている。「頑張って歩いているあなたを見て、私たちとても元気をもらった」と言ってくれた。はっとした。歩いている自分に、そんな視点はなかった。ハイカーなんて自分がやりたいから歩いているのであって、ただの自己満足の塊のような人間だと思っていたからだ。まさか、自分がこうして元気に歩いていることで誰かに元気を分けている存在になっているとは思いもしなかった。
その後、彼らは元気に麓へ降りて行った。素敵な出会いだった。あまりに深坂峠の居心地が良いのでずっと寝ころんでいた。すると、一台の車が止まり、二人の男の人が出てきた。話してみると、渓流で釣りをしてきたところだという。私も渓流釣りをするので盛り上がった。そして、何かを車に取りに行ったと思ったら、釣ったイワナを一匹くださった。イワナは私の大好物だったので大喜びだった。丁寧に内臓も取っておいてくださり、今晩はイワナ汁にでもしてくれ、と言ってくれた。ありがたくいただいた。その後も話をしていると、この辺りでは有名な方で、雑誌などによく寄稿をしている方であることが分かった。峠は良い出会いが多くていいなぁと思った。
しばらくして、テントサイトに移動した。大きな湿地が広がる場所で、大蛇伝説が残る野々海池のほとりにあった。
この日も無事に歩き終わった。ほっとした。日当たりのよい場所にテントを張った。水が少し濁っていたが、フィルターを通せば問題はない。スポーツドリンクをたくさん飲むと体が軽くなった。少し湿気を含んだシュラフをテントの上に干し、靴も切り株の上で干してココアを飲んで一息ついた。ここでテントマットから空気が抜けるという事件が発生した。やはり、トレイルではエアーマットはだめだ。登山を始めたころ最新のかっこいいものにあこがれていて購入したが、だめになってしまった。
昔からの銀マットが一番快適に過ごせるのだろう。最近は見栄えよりも快適性を重視してものを選ぶようになったので帰ったら新調しようと思った。とりあえず、今回のトレイルは空気が抜けるのを我慢して使い続けなければならない。
空気が乾燥している。今回は、持ち物にボディーオイルを入れてみた。トレイルにいるとはいえ、一応女であり、肌が乾燥して過ごしにくいのは嫌である。女子力グッズは、もてる体力がない人が無理に持っていくのはどうかと思うが、体力があるのなら持って行ってもいいと思う。余計なものを持っていくのにどうこう言う人もいるが、持っていきたければ持っていけばいいのである。女性にしかわからないかもしれないが、何となく女子力グッズがあると気分が上がるのだ。電波も入っているのでなかなか快適に過ごした。
日も沈みかけてきたのでイワナの調理を始めた。調理といっても、ぶつ切りにしてコッヘルに入れ、グツグツと煮込むだけだ。だんだんといい匂いが漂ってくる。そこに、みそ汁の元と少し乾燥わかめを入れて完成だ。そして仕込んでおいたウィスキーを取り出し、あっという間においしい夕食が出来上がった。
日が沈むと物々しい雰囲気があたりを覆った。大蛇が出てくるのではないかという雰囲気だった。テントサイトからトイレまで少し離れており、トイレをぎりぎりまで我慢した。左足がまだ痛かった。冷水で冷やし、体のストレッチをしてシュラフにもぐりこんだ。
&Green公式ライター
大学時代に初めて一人で海外に旅に出たのを機に、息をするようにバックパッカースタイルの旅を繰り返す。大自然の中に身を置いているのが好きで、休日はいつも登山、ロングトレイル、釣りなどの地球遊び。おかげで肌は真っ黒焦げ。次なる旅を日々企み中。