John Muir Trail -ある夏の私の旅- 【3日目】

トレイル

8月24日【Day3 Cathedral Lake → Marie Lakes Trail 34.9km/62km】

朝起きて、テントから顔を出した瞬間、目の前に素晴らしい景色が広がった。

山の向こうにある太陽は、まだ顔を出していない。紫がかった、美しい空だった。この先、毎日この景色を見ることができるのかと期待してしまう。

この日は、私のトレイル全行程の中で一番歩いた距離が長かった。34.9kmだ。

山道を、34.9km歩いた。

だいたい、峠を越えると下りの道になる。日本と違い、急にアップダウンがあるのではなく、緩やかに長く登りや下りがずっと続いているというイメージだ。前日に峠を越えてすぐのところでテントを張ったため、この日の最初はどこまで下るのかという下り坂だった。

朝日に照らされている森の中をいい気分で下る。下りきったところに補給ポイントがある。Tuolumne Meadowsだ。ここでは食料などを補給できるが、私は止まらずに歩いた。

二日ぶりに車を見る。ここからMt.Whitneyを下ったところまで車や、大きな人工物を見ることはなかった。そして、ここからMt.WhitneyのふもとまでずっとPacific Crest Trailを歩くこととなる(John Muir Trailはその一部となっている)。

Pacific Crest Trail、あの古びた看板の実物を目にしたとき、感動して何枚も写真を撮った。ああ、ここを今歩いているんだ、と。

途中のLyell Canyonは川沿いの、平坦で静かな湿原だった。釣りをしている人や、昼寝をしている人など、過ごし方は様々だった。

水を汲んで飲んだが、冷たくておいしい水だった。風が気持ちいい。どこまでもこの道が続けばいいと思った。

すれ違ったハイカーとよく話をした。「どこから来た?」「どこまで歩くの?」「今何日目?」と、気軽に話しかけてくれる。無補給であることを伝えると、驚かれた。

ちなみに、無補給で歩いている人には一人もあったことがない。その挑戦を同じようにしている人がいたら、会ってみたかった。

ほとんど平坦なトレイルであったので、テントを張る予定の場所に着いたのがお昼を少し過ぎたくらいだった。

そこまで疲れていなかったので、もう少し行けると思い、この日は太陽が山に隠れるまで歩こうと決めた。トレイルの二つ目の峠である、Donohue Passの近くまで行くことにした。

峠の登りが始まった時、Lyell Canyonで話をした三人組にまた会った。彼らは、今日中に峠を越えるという。ならば私も越えようと思った。そこから自分との戦いが始まる。

最初はいいペースで登っていたのだが、だんだんと力が出せなくなってきた。三人組に追いつけない。

峠に近づくにつれて周りの岩は徐々に険しくなっていき、テントを途中に張れそうもない。風も強くなり、太陽も追い詰めるように傾いていく。やっとの思いで峠を越え、下を見ると三人が小さくなっていた。

まだテントを張れそうな平坦な場所はない。とりあえず下る。もう太陽がほとんど見えない。ここで完全に暗くなったらアウトだなと冷静になっている自分がいた。

この辺りは、蚊が多く、払っても払ってもついてくる。多すぎる。

そして、やっとテントが張れそうな場所に着いた。さっきの三人もいた。

この日は12時間歩き続けた。テントを張り、夕飯を一緒に作り、各々自分の紹介をした。夕飯を食べているときに、夕焼けが美しいことに気が付いた。

そして、もう一つ、この日は日本時間の私の21歳の誕生日だった。三人が祝ってくれた。最高の誕生日だった。一生忘れないだろう。

長かった一日が終わった。峠で力が出なくなったのは糖分不足だったのではないかと今思う。

そういえば、峠からの景色はとてもきれいだったな、と、テントの中で一人思った。明日もいい日になりますように。

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