「ドライスワッグ」をご存じですか?あまり聞きなれない「スワッグ(swag)」とは、ドイツ語で「壁飾り」を意味する言葉だそうです。生花ではなくドライフラワーを束ねた壁飾りのことです。
ドライスワッグは、ナチュラルなインテリアを演出するアイテムとして、数年前から静かなブームとなっています。手作り品を購入できるネットサイトには、たくさんのドライスワッグが出品されていて、手作りキットも大人気です。
キットがなくても、ガーデニングで育てた花や市販の切り花から、自分でドライスワッグを作ることは簡単にできます。そこで今回は、ドライスワッグの歴史や、ドライスワッグに向いている花、作り方などをご紹介していきます。
ドライフラワーとドライスワッグの歴史
では、ドライスワッグの素材であるドライフラワーの歴史をおさらいしてみましょう。
ドライフラワーの歴史は非常に古く、紀元前の古代エジプトの時代にまで遡ります。古代では、ドライフラワーはガーランドと呼ばれる紐でつなげた花飾りにしていたそうです。ガーランドにしたのは、神々の像や生贄の動物にかけるのに好都合だったから、だったり壁画に描かれた図柄を具現化したから、とも言われてます。
古代ローマの時代にガーランドの文化はさらに発展します。富裕層はガーランド職人を雇って邸を飾ったのだそうです。紀元79年に噴火で埋もれたポンペイ遺跡からは、ガーランドにするためのバラ、スミレ、カーネーションなどを育てた栽培地の跡が見つかっています。
その後、ガーランドを輪の形にしたリースが生まれます。リースは元はといえば、異教のものとされキリスト教会からは禁止されていたそうですが、後から時流に寄り添う形で認められました。リースは今やクリスマスの定番飾りになっていることは、みなさんもよくご存じのとおりです。
花を束ねた形のドライスワッグが歴史に姿を表すのは、それからかなりの時間が経ってからのことです。16世紀ごろ、寒さが厳しい北欧では、花がなくなる冬に備えてドライフラワーをつくり、束ねてスワッグにして、クリスマスや新年に飾っていたのだそうです。そのドライスワッグが北欧からイギリスに伝えられたのが、ドライスワッグの文化の始まりだと言われています。
ちなみに、ドライスワッグの歴史を調べていくと、「swag」がドイツ語であるという説と「swag」は北欧の言い方であるという話が出てきて、何が本当なのかわからなくなってしまいます。でも、日本では東欧とされることの多いドイツですが、北欧に分類されることもあるので、どちらも正解なのかもしれません。
古代からあるガーランドやリースに比べると、ドライスワッグが歴史に登場するのは意外なほど後になってから、ということがわかりました。ドライスワッグという名前はなくとも、もしかしたら人々はドライフラワーを束ねて飾っていたのかもしれません。
ドライスワッグに向いている花
ドライスワッグに向いている花は、ドライフラワー向きの花と同じです。つくったことのある方ならお分かりかもしれませんが「水分が少ない花」がドライにしやすい花です。
水分が少ない花とは、触ってもしっとりする感じがない花です。花の形の特徴としては、スターチスのように花びらがちぢれた感じで表面積が大きいような花が向いています。
反対に、水分が多い花はどんなものかというと、花びらや葉に触ると厚みがあり、しっとりとしているような花です。例えば、ユリ、カラー、ツバキなどで、これらの花は乾燥に時間がかかり、色が悪くなってしまうため、ドライにするには不向きです。では、ドライフラワー向きの花を具体的に挙げておきます。
ユーカリ
ユーカリは、ドライにすると葉の色がシルバーがかってなんとも言えない雰囲気を出してしてくれます。花だけでは物足りないドライスワッグを格上げしてくれるような存在です。葉の形が柳のように細長いウィローユーカリも人気があります。他にドライスワッグに適したグリーンとしては、ローズマリーやヒバも挙げられます。画像にある「ワックスフラワー」はオーストリア産の花で、切り花として流通しています。
スターチス
スターチスもドライにするのに向いている花の代表格です。仏事に用いられることが多かった花ですが、ドライフラワー、ドライスワッグの人気とともにメジャーになりました。花の色は、紫、薄紫、ピンク、白などで、色の濃淡もさまざまです。色ちがいのスターチスだけでまとめると落ち着いた印象になります。アクセントとして、紫系のスターチスに反対色にあたる黄色のミモザを入れると、スタイリッシュな印象になります。
カスミソウ
言わずと知れたカスミソウはドライスワッグが人気になるずっと前から、ドライフラワーとして活用されてきました。カスミソウをメインにしたドライスワッグは、花色に合わせてホワイトカラーの花と合わせたり、ハーブと合わせてグリーン系でまとめることもあるようです。
ドライフラワーづくりの上級者の方は、生花のカスミソウに万年筆のインクを吸わせて色とりどりのカスミソウをつくり、それをドライフラワーにしています。カスミソウは、他の花より着色するのが簡単ということなので、ドライフラワーにする前に好みの色に染めてみるのも楽しいかもしれません。
アジサイ
咲いている姿も美しいアジサイは、ドライにするとセピア色でボリュームがあり、他を圧倒する存在感を持っています。花がグリーンカラーの洋風アジサイ、アナベルをグリーンの葉や枝と合わせるドライスワッグなど、大人っぽいアレンジをされることが多いようです。ドライスワッグとしてだけでなく花瓶にさしてインテリアアイテムにされることもあります。
マリーゴールド
マリーゴールドはドライにしても、花の色が残りやすいところが長所。オレンジや黄色のカラーを生かし、赤茶のワレモコウと合わせると秋に似合うドライスワッグになります。ふさふさした花が特徴のケイトウは、花の色が赤、オレンジ、黄、濃いピンクなど、マリーゴールドと相性のよい色味が揃っています。ドライスワッグでも、マリーゴールドとケイトウを合わせると相性抜群です。
ラベンダー
ラベンダーの魅力はなんといってもその香り。いい匂いというだけでなく、副交感神経を優位にさせ、リラックス効果があることでも知られています。ドライにする過程も、できあがった後も、香りが漂います。もしガーデニングでラベンダーを育てているなら、ドライスワッグにすると何倍も楽しむことができるでしょう。自宅のラベンダーをドライにする場合は、花が咲いてすぐに摘むと、きれいなドライフラワーになります。
ドライスワッグをつくってみよう!
素敵なキットも販売されていますが、キットにセットされているものは、ドライフラワー数点と麻紐やリボンなど。ということは、ドライフラワーさえあれば、自分でもドライスワッグを作ることができるはずです。ドライフラワーにも、いくつか製法がありますが、一番簡単なハンギング法をご紹介します。
ドライフラワーの作り方〈ハンギング法〉
①.ドライにしたい花をつぼみが開いたその日に、一輪ずつ紐で吊るして干す。
②.だいたい1週間から2週間でドライになる。
手順はたったこれだけです。干しながら、鮮やかな花の色がだんだん変化していくプロセスや花の香りも楽しむことができます。シリカゲルなどの乾燥剤を使わない分、干すタイミングや一輪ずつ干すというポイントはできれば守るようにしましょう。花が開いたその日に干す理由は、つぼみだと水分が多すぎ、開花から日が経つと花の色が褪せやすくなるためです。
ドライスワッグの作り方
ドライフラワーができたら、次はドライスワッグを作ってみましょう。一輪ずつ干していた花やグリーンのドライフラワーをバランスよくまとめるのがコツです。
- グリーンなど大きめのドライフラワーで平らな面をつくる。平らになるよう、余計な部分や下葉をカットする。
- 茎をまとめて手で持ちながら、ドライフラワーの花を加えていく。
- 形が決まったら、麻紐でまとめる。固結びした後、壁に飾るときに使うための紐を長めに残しておく。
- 本体、持ち手側とも、飛び出た部分をカットして形を整える。
- 飾るときと同じ花が下向きの状態で、形よくリボンを飾る。
花や葉の色は、そのまま残ることはなく色褪せてしまいますが、色合いの変化も楽しむのが「ハンギング法」です。あざやかな色を残したいときには、花に薬剤を吸わせる「グリセリン法」というやり方もあります。
ドライスワッグの寿命は?
自然由来のドライスワッグは、飾っているうちに虫やカビがついてしまうことは避けられません。清潔に飾って置ける目安は、1年間ぐらいと言われています。何年も飾っておけないのは残念ですが、100%自然素材なので処分するときにも環境を破壊してしまうことのない、サステナブルなところも魅力です。季節に合わせてドライスワッグを新しいものに変えていくと、その度に花の香りも楽しむことができます。
おわりに
ドライスワッグは、昔から人々に親しまれた魅力あふれるアイテムで、最近はその素朴なナチュラルさが注目の的になっています。そのうえ、環境にもやさしく、作り方にむずかしい決まりなどは一切ないのも嬉しいところです。育てた花やお気に入りの花で、気軽にあなただけのドライスワッグをつくってみませんか?
【 この記事を書いている人 】
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