John Muir Trail -ある夏の私の旅- 【6日目】

トレイル

8月27日【Day6 Duck Pass Trail → Mono Creek Trail 25.4km/138.9km 】

朝、なかなか体が動かず、日が昇るころまで寝た。

この日は最初から登りだった。昨日、手ぬぐいで補強した靴下が思っていたよりも歩きやすい。Purple Lakeまでの登りはそこまできついと感じることがなく登りきった。この日も朝の風が心地よかった。

そのあとも順調に進む。湧き水もいたるところで出ていて、空も高くて気持ちがいい。

ジグザグと下り、Fish Creekまで出ると、そこには久々に見る人工物、橋が架かっていて一気に気持ちが上がる。思わず何度も触った。どんなに小さなものでも、人工物を見かけると嬉しくなる。これを立てる時に、ここに沢山の人がいた、というのがなんとも嬉しい。

トレイルでは、一日で人に10人会えばいい方だった。

Silver Passに向けて歩く。蚊が多い。服から出ている皮膚という皮膚をすべて刺してくる。この時にバフが役に立った。蚊が、蚊柱を立てて待っていて、通るとついてくるので本当に厄介な存在だった。

少し雲が集まってきた。朝は晴天だった。ここは天気がすぐに変わる。

Silver Passまでの道のりは、白い砂と白い岩のきれいな場所だった。一度、道を間違えてしまい川を渡ったり、道かわからないところを進んだりした。携帯のGPSが正しい位置を示していたので、正しい道に出ることができた。休憩をとりながら登ると、Silver Passに出た。この峠からの景色は雄大だった。通ってきた道のりがずっと見えた。自分が歩いてきたのが信じられなかった。3つ目の峠を越えた。

この日は、谷の一番下まで降りた。下るときはいつも、何を考えていたのか覚えていない。恐らく、無に近い、何も考えずただひたすらに下っている。それが心地よかった。

途中でピンクの服を着たおじさんと、お姉さんに出会う。同じ方向に歩いている珍しい人たちだった。ピンクのおじさんは、確か3日目に一度会った。

久々に会い、その時に私が自分は無補給で歩いていると言った。そのあとに何度かあったが、彼は私を見ると「Hey! No resupply!!」と呼んでくれた。彼にとって私のあだ名が無補給になったらしい。二人のスピードは本当に早かった。三人で細々と話しながら下った。

途中、二人と離れた時、頭上で嫌な音がした。さっき、雲が集まってきていた。あ、やばいかな、と思ったがこれが当たりだ。近くに雷が落ちた。今ここで雷が上に来たら逃げる場所はない。だんだんと自分の方に近づいてくる。

怖くなって、走るように下った。さっきの二人に会いたかった。一人でいたとしても、三人でいたとしても、雷が落ちれば終わりなのは同じことだが、本当にどうしようもない状況に陥ると、人は人に会いたくなるのかもしれない。この瞬間は正直、心細かった。

どうにか追いついた。彼らは楽しそうに話しながら下っていた。自分の頼りなさに悲しくなった。彼らは本当に慣れていた。おおらかで些細なことは気にせず歩く二人が遠く見えた。

お姉さんは、この日に街に戻るらしい。ピンクのおじさんはその見送りに行く、と、途中にある街へとつながる道に歩いて行った。私も街に出ようと思えば出ることができたかもしれないが、やめた。絶対にMt.Whitneyに登るまでは街に出たくなかった。

その日は谷にテントを張った。まだ雷が鳴り続いている。外で火を起こして夕飯を作っていると、雨も降ってきた。いつもはテントの外で過ごすことが多いが、この日は中でゆっくりした。

右足のふくらはぎが痛い。初日につった痛みがまだ少し残っている。ストレッチとマッサージをしながら、Caravanの曲を流す。ああ、またライブ行きたいなぁ。そんな事を思いながら過ごす。雨が強くなってくる。テントに当たる雨音が、心地よい。バックグラウンドミュージックのように心に響く。また明日も頑張ろう。一日が早い。

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