John Muir Trail -ある夏の私の旅- 【11日目】

トレイル

9月1日【Day11 Marjorie Lake → Glen Passの下の湖 29.9km/281.6km】

二つの峠を越えた。

一つ目は、歩き始めてから1時間半で越えることができた。Pinchot Pass。誰もいない。絶景を独り占めした。峠の上でほっと一息つくのが好きだ。

昨日、左足をかばって歩いていた右足の太ももを、峠のあとの下りで痛める。もう、足の筋肉が片方痛くても両方痛くても同じことだ。峠からの下りがすごく長く、どこまで行くのだろうと思った。あまりにも長くておかしくなりそうだったので、気晴らしに音楽を聴きながら歩いた。

谷の一番下についた時、久々に人工物である橋を渡った。人工物を見かけると、どうしても手で触ってしまう。そのあとは、平原を歩いたり、湖を横目に気持ち良い風に吹かれたり、白い砂の大地を歩き続けた。

最後の峠を越えるとき、やっと峠が見えるところまできた。もう少しだと思ったのもつかの間、峠だと思っていたところが峠ではなく、ただの坂であったことがわかった。精神的にも、前日から続く疲労にもやられた。でも、ここを越えないと今日は終われない。まだ進める、と体は言っていた。やっと峠が見えた時、絶句した。はるか向こうにあった。上に小さく人影が見えた。こういうところで自分の追い込み精神が出てしまう。峠を越えたところでテントを張ると決めて歩いた。

どこを登るのか、一目見ただけではわからない、岩山だった。上がっても上がってもたどり着かない。寒い。風が強い。酸素が薄い。足が痛い。自然の恐怖と闘っていた。

そして、長い坂が終わり、やっと着いた。そこには別のハイカーが一人、大きなカメラを手にして写真を撮っていた。彼がカメラを向けた先を見ると、大きくえぐり取られたような広い大地が広がっていた。何にも代えられない、素晴らしい達成感に包まれた。心が震えるとはこのことだろうか・・・。

大地が広い。大きく背伸びをすると気持ちがいい。峠は毎回つらいが、この登り切った瞬間が好きだ。

峠から下るとき、下に小さな湖が見えた。あそこに泊まろう。足を引きずりながら急斜面を下る。やっと湖のほとりについた。しばらくは動けなかった。ちょうど目の前に、さっきまでいた峠が見えた。

冷たい水を汲み、フィルターでろ過をして、それを一気に飲み干した。その瞬間、自分は今、生きていると感じた。水を飲んだだけで生きていることを実感できた。

気づかなかったが、この日は11時間歩き続けていた。夕飯を作って食べる。温かいものがおいしい。そんなに食べなくても大丈夫な体になってきたので、少し食べただけで回復している気がする。足のマメもまた増えて、足のツボを押そうと思っても、押せるところが少ない。こめかみの上が痛い。なぜだろうか。足が痛くて正座ができない。時計焼けがすごくなってきた。手も真っ黒になっている。

お風呂に入りたくなってきた。あとは、味の濃い食べ物が猛烈に食べたい。ふもとに戻ったら肉がたくさん入ったハンバーガーを食べようと決めた。残す峠はあと一つになった。早い。毎日起きて歩いて眠るだけの生活は、一日が早く感じる。楽しみなのか、早く終わってほしいのか、寂しいのかわからない。  

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