熊野古道旅情紀行 01

アウトドア

国際線のゲートが閑散としているのを横目に、静かな空港の中を進んだ。飛行機の預け荷物のルールを忘れかけている自分にどこか悲しくなった。

以前は、息をするように飛行機に飛び乗り、自分でも驚くようなスピードで世界のさまざまな場所を飛び回っていたものだ。世界がコロナ一色になって、生活も環境も変わってしまったが、それでもまだ心の中にあるどうしようもない探究心やもっと遠くへと掻き立てるこの気持ちは変わらぬままらしい。

今回は以前から気になっていた熊野古道を歩こうと思う。熊野古道を強く意識したのは、ジョンミューアトレイルを歩いていた時にみんなが口をそろえて「日本の熊野古道に行ったよ」「熊野古道はどうしても行きたい」と話してくれた時からだろうか。日本にも、海外の方が歩きたいと思う道があることに嬉しくなった記憶がある。

しかし当時は、日本の道を歩くのは老後でいいやと考えていたので後回しになっていた。そんな中、海外に出ることが厳しい世の中になり、もう一度、私の中で熊野古道にスポットライトが当たることになったのだ。

関西国際空港に到着した。

久々の大阪は、都会だった。人間臭い。和歌山まで電車を使って移動した。普段田んぼの中で過ごしている私からすると大阪の街は富と名声が築き上げた一つの作品のように見えた。その作品の中で、最低限の荷物を背負い、人間社会から逃れようとしているのだから滑稽だった。田舎で暮らしていると電車に乗らない。久々の電車は旅の気分を上げてくれる。座っている人、大きな荷物を持っている人、外を眺めている人、全てが私の旅に彩りを与えてくれた。

この日は和歌山市内のゲストハウスに泊まらせてもらった。ビールとチーズケーキで心躍る前夜祭を過ごした。歩く前の最後のシャワーを浴び、パッキングを済ませ、まだ周りの人が楽しんでいる中、布団の中に潜り込んだ。

いよいよ熊野古道だ。

どんな出会いが待っているのだろう。

どんな旅になるのだろう。

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