ブラックバスやブルーギルに始まり、近年、「外来種」というワードをよく見かけるようになりました。世間では今現在「外来種=悪」という認識が広がっています。ではなぜ悪とされてしまうのでしょうか?
ここでは盲目的に「外来種=悪」とならないように、外来種が私たち人類にいったいどのような悪影響を及ぼすのか、それがどう問題視されているのかを「人類の利益」に紐づけて簡単に説明していきます。
※お伝えすることはほんの一例でごく一部です。いまだ事実とされていない部分も多く存在します。ボトルネックや遺伝子汚染、国内外来種等と紐付けて説明したいところですが、多くの前提知識が必要になるため筆者が発信できる範囲でお伝えしていきます。
生態系と外来種
生態系と外来種にはさまざまな考えがあり、その中の一つとして「人間が生活するために生態系に干渉していく中で、その干渉によって人間に負の影響が返ってくる可能性が出てきました。生態系は複雑で何が起きるか分かりません。極力影響を小さくしましょう」という考え方があります。
例えば、大陸から来た稲は長い年月を経て我々の食卓では主食となり、緑茶は日本を代表する日本定番の飲み物となりました。一方同じくして人の手により侵入してきたウシガエルやブラックバスは在来生物を捕食し個体数を減らす一因となり漁業に影響を与えました。これらの生物は生態系の多様度にもまた大きな影響を与えています。船のバラストに混入してきたホンビノス貝は水産資源の一つとなりました。しかし今のところ生体系への大きな影響は確認されていないようです。
このように外来種は我々人類に大きな影響を与えるものやそうでないもの、はたまたよくわからないものも存在します。また【プラス・マイナス面】からみても同じです。そのことから、(※後に説明する『生態系サービス』と絡めて)「人間が自然から受けられる恩恵は、生態系の多様度と密接に関係していることから多様性を大事にしたい。だから、そこに影響を持つことがある『外来種の侵入』という事象には慎重になろう」という考え方があります。
我々人類が生きていく上で欠かせない水や食料を始めとする【恵み】は、生物多様性を基盤とする生態系によって支えられています。この生態系の恵みのことを『生態系サービス』と言います。そしてこの生態系サービスは、生物の多様度と正の相関があるとされています。簡単に言えばそれぞれの生き物に特定の【得意・不得意】の要素があるということです。その種数が多ければ多いほど負に対して処理能力が上がるということです。この多様性というのは生物の種数以外にも、【種】そのものの【遺伝】も含まれます。人が生きていく上での環境の中には「さまざまな生き物に色々なヤツ(多種類)が存在するほど良い」という考え方です。ここに生物多様性に負の影響を与える外来種が侵入すれば最終的には人間への恩恵にも影響が出てくることになります。
ごく小さな繋がりの連続で複雑なネットワークを構築している生態系にはただ一種の侵入で揺らぐ可能性があるということです。それは人類が何も干渉しなければそのバランスに基づいた営みを続けていたはずのものであったのです。そこに別の生態系から来たものが人の手によって侵入すれば何が起きるのか、その結果は誰かが断言できるものではないのです。もっとも、人間の行動も生態系の一つと考えると更に話がこじれることではあるのですが・・・。
ポイントは、「外来種の侵入を肯定するのは危険」ということ
例えばブラックバスも長い年月の流れの中で生態系に溶け込んでくるといった意見があります。本当にそうなのでしょうか?恐らくその客観的な事実を明確にすることはなかなか難しいでしょう。また完全駆除が可能かどうかも不透明です。忘れられがちですが、ニジマスやヒメマスも人間が放流した外来種です。サンショウオの仲間の個体数激減のトリガーとなったこともあります。植物の世界でも似たような事象が多々あります。
先述の内容と似たような場所にたどり着きますが、結局のところ、よくわからないのが生態系です。だからこそ慎重にならなければいけないのです。外来種の侵入を安易に肯定すること自体が危険な行為ということです。稲や茶のように我々の生活にプラスの影響を与えたような事例を盾にとってしても良くないと感じます。そして慎重になることが結果的に人類の利益に繋がりやすいかもしれないということです。
では、以上のことを踏まえた上で今できることを考えてみましょう。
我々にできること
国や各自治体では外来生物の扱いについてリリース禁止や放流禁止、生きたままの移動禁止や植栽禁止、販売禁止などの決まりがあります。まずはこのことを守りましょう。個人の意見がどうであれ、これらの取り決めは列記として知見のある方たちが熟考し審議した上で決定していることです。少なくとも素人の私たちが「自然がどうだ、生態系はこうだ」などと活動するよりは良いでしょう。生態学は非常に複雑な学問です。
ネットに出回っている記事はさまざまです。すべての記事ではありませんが主観的な考えに基づく「外来種は極悪派VS外来種別にいいじゃん派」の不毛な戦いの流れ弾を食らうだけで終わってしまいます。学者たちの著書や論文等から、意義のある情報を知ること。そして、深く学ぶことです。
ですが筆者が思うに、この類のものは決してネットなどで「気軽に発信していいものではない」と感じています。
まとめ
・多様な考え方が存在する
・分からないから、慎重になること。
・最終的に人間が損をする可能性がある。
・生態系は複雑である。コントロールは素人が予想や断言できるほど単純ではない。
・個人的意見ではなく、私たち素人はルールを守ることや自然を守ることに繋がる。
【この記事を書いている人】
&Green 公式ライター/ webクリエイター
幼い頃から自然と親しむことで山の世界に没頭し、大学時代は林学を学ぶ傍らワンゲルに所属。海外トレイル、クライミング、ヒマラヤの高所登山から山釣りまであらゆる手段で山遊びに興じながら株式会社アンドに勤務する。&Green運営・管理を担当。最近は「10秒山辞典」なるものを作成しているとか。