熊野古道旅情紀行 04

アウトドア

前日、電気をつけたまま寝落ちしてしまったらしい。足先が寒くて起きた。夜の風はほとんどおさまったが、芯が冷えるほど寒い朝だった。乾燥してパリッとした空気が雲一つない快晴の空によく合った。いつものオートミールとスキムミルクと蜂蜜を混ぜた即席栄養満点朝ごはんを食べ、天気もいいので優雅に温かいミルクティーをいれた。寒くて動かない体をどうにか動かしてパッキングをした。良い天気の中、晴れ晴れとした気分で三浦峠を後にした。心なしかザックの荷物が軽い気がした。最初から程よい下り坂でとてもいい気分だった。朝一の凛と澄んだ空気の中を爽快に歩いた。足腰の疲労が残っているが、どうにか付き合っていくしかない。大体数日歩けば、後は何事もなかったかのように体が慣れていくのはいつものことだ。

この日もあちこちに茶屋跡があった。石組を見て、当時の姿を想像するのがとても楽しかった。割と最近まで山の中に住んでいたと思われる場所もあった。集団墓地のようなものがあったので、石に刻まれた文字を読むと、それは200年前のものだった。ここに眠っている人はどんな人だったのだろう。どんな人が墓石に文字を掘ったのだろう。今までどんな人が同じように道を歩いてきたのだろうと長い年月に思いを馳せる。その場所には、「想い」がずっと残っているような気がした。

あちこちで鳥が鳴く中、山道を出てアスファルトに合流した。朝、山から集落に降りてきたときに強烈に香る、少し朝つゆで濡れたようなアスファルトの匂いがたまらなく好きだ。新鮮な空気が体中に入ってきた。少し休憩し、長く続く車道を歩き始めた。最初は、車道だ、わーい、と楽しんでいたが、段々と高くなっていく太陽からの直射日光、足の痛さで修行のようになってきた。風は不思議と冷たいのに日差しが強かった。無心で歩いた。途中のエメラルドブルーの川やこじんまりとした無人販売、のどかな集落の雰囲気に癒されながら足を進めた。

川合神社で休憩していると、おじさんがもしよかったらとお菓子を下さった。ふわっと暖かくなった。日々忙しい生活を送っているその横でこのような世界が本当にあるのかと不思議に思った。途中で小さな商店があり、魔がさしてこの日の夕飯の材料やチョコやチーズを買った。お店があることが嬉しくて、ついついたくさん買ってしまい、あっという間に軽くなったはずのザックは元の重さに戻った。店のおじさんに、どこまでいくの?と言われたので、海までです、と答えた。ここからじゃぁまだまだ遠いねとのこと。まだ旅は始まったばかりだ。

なかなか終わりが見えない。車道歩きももうすぐ終わるという登山口前の温泉でお昼休憩をとった。たこ焼きのキッチンカーが来ていたので、もちろん買ってお昼ご飯にした。ほくほくのたこ焼きが疲れを飛ばしてくれた。天気が良かったので濡れたものや靴や靴下を天日干しした。アスファルト歩きがこたえたのか、ぼーっとした。

その後、小辺路で一番行きたいと思っていた果無集落への道を登り始めた。長くて急な石畳がずっと上の方まで続いていた。苔むしていて美しい。歩くとかなりの急さに驚いた。今も住んでいる人がいる集落なので、この石畳は現役の道路ということになる。この道を生活道として利用している人が今でもいるというのが驚きだ。令和に時代が変化したのは、日本のほんの一部だけなのかもしれない。そして、果無集落に到着した。青空がよく似合う、無駄がなく整っている美しい集落だった。遠くの山々が全て見渡せた。森が作る緑の絨毯の上にひょっこりと顔を出しているかのようだった。昔は熊野古道のいろいろな場所がこのような雰囲気だったのだろうなと思った。住んでいる方々が嬉しそうに話しかけてくださった。

果無集落からさらに急な上り坂が続いた。登っても登ってもつかず、足と腰と肩が悲鳴を上げた。ツルツル滑る石畳に足を取られながら黙々と登った。

3:30頃やっとの思いで観音堂に着いた。いいテントスペースがあったのでこの日は観音堂で泊まることにした。ありがたいことに、湧水がこれでもかというくらい流れていて、水には困らないような場所だった。お堂にこの日無事に歩けたことを感謝し、一泊使わせてくださいと手を合わせ、この日の行程は終了した。連日の筋肉疲労を取るためにビニールに水を入れてアイシングしたら一瞬で足が軽くなった。冷たい山の水がとても心地よかった。テントを立て、シュラフもマットも出して横になったり外を見てぼーっとしたり日記を書いたりしながら日が落ちていくのを眺めた。

歩けば歩くほど日々自分の中に溜まってしまった不純物がトレイルの上にポトポトと落とされて、自分が段々とありのままの透明な姿に戻っていっているのを感じた。夕飯はパスタを多めに茹で、途中の商店で買ったクリームソースをかけ、ウインナーをトッピングし、豪華な食事になった。ご飯を食べると体の芯が温まり、心地よくなった。この日はそれほど寒くなかった。

のんびりストレッチやマッサージをした。明日も良い日になりますように。怖い思いをしませんように。

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