私が「山を敬う」理由

アウトドア

2022年の夏シーズンもいよいよ終盤を迎え、山では一足先に季節が変わろうとしています。

今年も変わらず山で遊んでばかりの筆者ですが、山で遊ぶときには必ず山へ挨拶を欠かしません。山に対して[敬う]気持ちをとても大切にしています。

今回はそんな山を敬うその理由は何なのか?という少々込み入った話題について書いてみようと思います。

私は少し前まで山を敬うことについてあまり深く考えたことはありませんでした。ただ登り、楽しみ、降りる。その中に多少、精神性を伴った何かがあったことはありますが、深追いするようなものでもないと思っていたからです。

しかし山登りを続けていく中で、全く人に会わないような山、そもそも登山道の存在しない山深い場所、そんな山に入る機会が多くなってきた頃から「敬う」という行為に少しずつ意味を感じてきました。

山に感じる感情と向き合い、それらを解釈し、なぜ私が山を敬うようになったのかをお話していきます。

山は、妙な場所なのかもしれない

突然ですが、実は私は山が怖くてたまりません。

山をやっていると、どれだけ気をつけようとほんの些細なその瞬間に生命の終わり直前の崖っぷちを覗く出来事が起きることがあります。私も幾度か経験しました。山で大変お世話になった先輩を遭難で亡くした体験もあります。

しかし、そんな怖さと同時に私は山に不思議な感情を抱いています。

山は、本能に畳み掛ける、根の深い体験を我々に提供してくれます。山から見る景色はもちろん、山釣りや山菜採りでその恵みをいただくとき、そこで生活する日々、さらには人の生死までもがその体験の一部となってしまっています。町中で生きていては体感することができない、生々しい生命としての営みの一端が我々にも少しは許される場所であり、遠く人知が及ばぬ法則が支配しているように感じるが故です。

誰も居ない春先の尾根を藪こぎしながら登る

もう少し具体的に書いていきましょう。

怖いと感じるその山で遊び続けていると、どうにも表現しがたい山の表情と似ても似つかぬ、因果臭いものを感じるようになってきたのです。登山道が存在しないような、山深い場所に入るときは特に、五感が鋭くなり動物と化したような感覚におち入り、常に山臭さを気にしながら森に溶けていきます。

すべて気のせいなのか?ただの妄想で気にしすぎなのか?

各方面への許可が取れていないため詳しくは書けませんが、山で人が亡くなることに関連した不思議な出来事も何度か体験しました。

山は自身との相性のようなものを感じることもあります。どうにもおっかない雰囲気がただよい、途中で林道まで引き返してしまった沢や、どれだけ山深い場所まで入っても安心感を感じる山、なぜか足が進まなくやる気がでないと思ったら人の大きさほどの岩が数m先に落ちてきた時など、色々とありました。

皆さんもそんな不思議な体験したことありませんか?

真偽はともかく、世界中あらゆる場所に存在する山岳信仰はこのように山に対する恐れや人知が及ばないと感じてしまう心から生まれてきた産物なのかもしれません。

朝日連峰の某沢。人里から離れたこの沢を尾根に交差するまで詰めると、上杉景勝が使っていた山岳道路「朝日軍道」の痕跡にたどり着くとか・・・

畏敬の念を持つという結論

このような体験をした山での生活と向き合うと、それはいつしか山に対する[畏敬の念]となって私の山遊びに大きく影響を与え始めました。

これはそんな不思議なモノが存在しないと証明できないことと同時に、存在すること事態も証明することはできません。したがって、自身の体験のみを証拠とした場合、明らかに変なことが起きているという方向に判定が行くからです。

仮にそれが全く違ったとしても、「罰当たり」的思考のもと、山をきれいに、環境を大事に活動すること自体が安心感を買うことにもつながっているのでしょう。安心はミスの防止と冷静な判断がしやすい思考に繋がり結果的に、より安全に近づきます。

どちらが間違っていても畏敬の念を抱くことがメリットに繋がるとも言えます。

つまるところ、「山を恐れ、敬う」ということは安全な活動に良い影響を与えるということはまず間違いないのでしょう。

そして多くの体験から、私はどの山に入る際にも、山に挨拶をしてから入山するようになりました。山に入るときは「お邪魔します」山を出るときは「お邪魔しました、ありがとうございます」山釣りの際には「少し食料をいただきます」など、とにかく挨拶を欠かさずするようになりました。山中でゴミを見つけたときにはできる限り回収します。

だからといってではないですが、私は山に対する畏敬の念、つまりは「山を敬う」という考え方がもう少し広まってもいいと思っています。

信じるか信じないか、嘘か真かはさておき、楽しいイケてるブームとして山登りが流行るのであれば、少しそこに「畏敬の念を抱くこと(山を敬うこと)」も足してもらえたら、山登りがもっと奥深い趣味として認知されるのに、と。(※ただの願望です。)

あちらこちらで見かける山の神様の祠や神社を見るたびに、そんなことを考えています。

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