《登山データ》
1日目:立山駅=(ケーブルカー)=美女平=(高山バス)=室堂(2450m)⇒一の越(2700m)⇒雄山(3003m)⇒雷鳥荘宿泊
2日目:ミクリガ池・地獄谷散策⇒一の越(2700m)⇒雄山(3003m)⇒大汝山(3015m)⇒室堂(2450m)
夏休みに両親、妹家族と登山をする話になりました。いくつか候補地も挙がりましたが、3000m級の山でありながら、アクセス良く、宿泊施設も完備され、周辺への観光も充実している立山に総勢8人での登行となりました。
日本に3000mを超える山は23座あります。(21座という説もあり)立山は大汝山が最高峰(3015m)で、22番目に高い山とされています。また日本100名山3000m超の山、全13座の中でも12番目に高い山になります。信仰の山として古くから多くの人に親しまれており、乗鞍岳と並んで初心者でも登りやすいとして人気の山です。
初日は車で立山駅まで向かうところから始まりました。立山駅からはケーブルカー(10分弱)と高山バス(1時間程度)を利用して、室堂まで一気に上がります。夏休み中の家族連れも多いため、この時期に行くのであれば、ある程度待ち時間も予定に入れておく必要があります。
【ケーブルカーを待つ】
【室堂周辺】
昼食を済ませ、立山自然保護センターを見学した後、しばらく散策しました。あたりには高山植物も咲いて、標高2500mの世界は涼しく快適です。この時すでに1時も過ぎていましたが、父と私はそのまま山荘に行くのも忍びなく、二人でその先へと進みます。しばらくはゆるやかで開けた石畳の道が続きます。時折、霧も晴れてあたりの稜線が浮かびます。
【雪の残る道 脇に咲くコバイケソウ】
しばらく石の積まれた小さな祠が祀られている地点に到着しました。ここから先は神聖な区域とされ、かつての立山信仰では身を浄めて山頂を目指す分岐点とされていました。ここから急なジグザグの道を登っていきます。
室堂平から歩いて1時間ほど、一の越に到着しました。目の前には雄山の頂きが見えます。山頂までザレ場が続き、登っていく人、下っていく人が良く見えます。一の越山荘近くで休んでいると、体操服と思われるジャージ姿で下りてくる学生集団の姿がありました。富山の学生は年に一度は立山に登ると噂に聞きましたが、山間学校でも行くような軽装なのは、立山の整備された環境ならではですね。
ここまできたらそのまま引き返せず、ここで見ているという父を置いて、一人で雄山山頂を目指すことになりました。風も出てきた午後の山は、急なザレ場の道に滑りそうになります。朝からにぎやかな道中でしたが、今ここで山頂を目指しているのは私一人なのだと、心細さと共に不思議な心地よさも沸き上がります。
吹きつける風と滑る足もとに苦労しながらも、雄山神社の社務所のある広場に到着しました。目の前には雪渓が見えます。これは2012年に国内初の氷河と認定された御前沢雪渓です。氷河とは「陸上を連続して流動する雪と氷の大きな塊」と定義されていますが、御前沢雪渓はこれに該当する調査結果が得られ、学術的にも氷河と認定されました。この結果、極東地域の氷河の南限がカムチャツカ半島から一気に立山まで南下するのですが、自然の雄大さとともに、氷河だと定義されたのが、つい最近のことなのだと感慨深いですね。
【御前沢雪渓、奥に黒部湖も見える】
3003mの雄山山頂はそれより先の峰本社付近です。今踏みしめているのはわずかに3000m未満の地、残念ですが父も待たせているため今日はここで引き返します。
【雄山頂上 奥に峰本社】
宿泊した雷鳥荘から、雷鳥沢キャンプ場が眼下に見えました。夕暮れに沈む谷合に色とりどりのテントの花が咲き、背後にそびえる山の峰と対称的で印象深い光景でした。
翌朝、朝食を済ませた後、周辺の地獄谷、ミクリガ池などを散策します。立山は山岳信仰で神聖化されてきた一方で、古都(京都)から見て鬼門(北東)にあたり、噴煙あがる地獄谷、針山のような剣岳があることなどから、「地獄のある場所」と恐れられてもきました。美しいミクリガ池も、悪僧がこの池で三周せぬうちに(みくぐり)神仏の怒りに触れて沈んだ、という伝説が名前の由来になっていると知ると少し怖いですね。
【ミクリガ池】
雷鳥荘を出てから2時間ほど、再び一の越に到着しました。昨日と違って風も穏やかで、日差しが心地よいです。
【一の越から山頂へ 背後に浄土山、龍王岳】
今日こそは峰本社のある雄山頂上を目指します。鳥居をくぐって参拝料を支払います。ついに雄山山頂へ着きました。江戸時代以降、立山を支配した加賀藩によって、立山信仰登山のルート、登拝作法などが規定されたと言われます。ふもとにある岩峅寺村と芦峅寺村から登拝する道は禅常道とも呼ばれ、現在はその全てをたどるのは容易ではありませんが、最高峰に位置する社の前に立つことができました。
【峰本社へ向かう鳥居をくぐる】
【立山頂上 峰本社】
標識の向こうに尾根が連なり、その向こうに剣岳も見えます。ここからさらに立山の最高峰・大汝山(3015m)を目指します。前方には剣岳が、西側には今朝見てきた室堂のミクリガ池が見下ろせる景色を楽しみながら、稜線を歩いていきます。ここからさらに続く富士ノ折立(2999m)を入れて立山三峰と言うそうですが、今回は大汝山頂で休憩をはさみ、40分ほどで雄山に戻りました。
【雄山頂上から稜線を眺める】
再び雄山にある社務所に到着しました。ここで御朱印帳を購入しました。深い紺の地に筆描きのような金渋のイラスト、シンプルだけど、さすが霊峰、神秘的な雰囲気があります。上は富山県を代表する雷鳥とわかりますが、下はなんだろう…、社務所で聞けばよかったですね。
【雄山神社御朱印帳】
【雄山神社御朱印】
バスで美女平まで下る途中、落差日本一と言われる称名滝が見えました。今回はバスからの眺めですが、美女平から弥陀ヶ原ルートをたどるコースでは迫力ある姿を見ることができるそうです。高山病に悩まされた夫を横目に、立山は本当に初心者にもやさしい、臨機応変に楽しめる山だと思いました。
【バスから見えた称名滝】
※参考サイト
『富山県公式ウェブサイト』
『(氷河)』
『雄山神社公式』
※参考著書《日本百名山を登る下巻 昭文社》
日本百名山を登る 下巻 (登山ガイド)
【 この記事を書いている人 】
&Green 公式ライター
20代後半に連れて行ってもらった低山縦走コースで登山の楽しさに目覚める。一時期体調を崩したが、数年前から関東近辺の低山中心に日帰り登山を楽しむ。コーヒーが大好き。人生後半の暮らし方についてトライアンドエラーの日々。