■登山データ
湯河原駅=(箱根登山バス:15分程度)=幕山登山口(199m)⇒一の橋⇒大石ヶ平(340m)⇒幕山・南郷山分岐点(551m)⇒幕山頂上(626m)⇒幕山公園⇒鍛冶屋バス停
湯河原駅からバスで20分ほど、終点の幕山公園で降りると、梅とロッククライミングの名所で知られる幕山に到着します。山麓の幕山公園では毎年3月中旬まで「梅の宴」という祭りが開催されており、夜はライトアップなどで賑わうそうです(2022年は残念ながら中止になりました)梅の時期が有名な山ですが、新緑のこれからの時期には瑞々しい緑におおわれ、ハイキングコースとしてもおすすめです。
湯河原駅から幕山公園方面のバスは1時間に1本程度、30分ほど待ったのちに幕山公園行のバスに乗ることができました。幕山公園行に乗れなかった場合は、途中の鍛冶屋バス停から30分程度歩いて向かうこともできます。鍛冶屋バス停は五郎神社の前にあり、立派なクスノキを周ってUターンするようにバスが進行します。鍛冶屋一帯は1180年(治承4年)、石橋山の戦いに敗れた源頼朝が身を潜めたとされる洞窟(しとどの窟)があります。この地で難を逃れた頼朝が後に平氏を倒した歴史的な転換の地でもあり、(湯河原駅前には頼朝に協力した郷土の武将、土肥実平の像がありました)ここで降りる人も多くいました。
20分ほどの乗車ののち、幕山公園バス停に到着しました。幕山はロッククライミングができる山なので、大きなマットを背負った人たちにさっそく遭遇しました。駐車場もあるので、大荷物でもアクセスしやすい山です。しばらく歩くと、幕山が見えてきました。今が満開とはいきませんが、ところどころ朱も混じって見えます。
【橋の向こうに幕山】
橋を渡ると幕山公園の敷地内です。売店やトイレなどもあります。公園内の道を左手に進みながら、遅咲きの梅を楽しみます。道沿いを新崎川が流れ、その脇をマットを背負った人たちが歩き、思い思いの時間が流れていきます。
【川沿いを歩く人】
15分ほど歩いたのち、橋を渡った先に「夫婦の桜の郷」という石碑がありました。沿いに小ぶりな桜の木が並びます。こちらは夫婦の記念樹が植えられているそうです。
【橋の奥に「夫婦の桜の郷」の石碑】
桜の郷の少し先にある一の橋の分岐点に到着しました。幕山までの距離と共に「クマ注意」の案内板も設置されています。この注意喚起の案内板は山行中に何度か見かけ、低山ながら、見えない敵と対しているような心地がしました。ここは山の神に無事を祈りましょう。こちらは湯河原町鍛冶屋地区の山仕事に携わる人たちにより祀られたそうです。いつの時代も人は山に入る時、謙虚な気持ちで神と対峙するのかもしれませんね。
【山の神】
しばらく新崎川を見下ろしながら進みます。せせらぎも聞こえるヒノキ林の道が心地よいです。歩くこと20分ほど、大石ヶ平地点に到着しました。
【大石ヶ平の案内板】
ここからは背の低いつるのような木々が茂り、あたりがよく見渡せます。新崎川を離れ、白っぽく乾いた光景が広がります。しばらく進むとハコネダケが覆いかぶさるように生い茂る地点に入りました。箱根山周辺の地域に生息するイネ科の植物で、暖かくなる時期には高さ3mに成長するものもあるとか。視界が狭く、ここでクマに遭遇したら、逃げ道はなさそうです。ハコネダケのトンネルを抜けると、しっとりとした杉林に入ります。幕山・南郷山へと進む分岐点に到着しました。
【幕山・南郷山への分岐点】
ここで痛恨のミスをしました。この分岐点から南郷山方面に下った先に「自鑑水」と言われる水溜りのある場所があるのですが、通り過ぎてしまいました。石橋山の戦いで敗れた源頼朝が、ここで水鏡に映った自身を見て嘆き、自害しようとしたとも、思い直して身なりを整え、再び奮い立ったとも言われる場所―頼朝が水面に映る自身の姿に何を見たのか、その想いに触れたかったですね。
分岐点から幕山山頂まで20分ほど、標高70mほどを登っていきます。しばらく進むと視界が開け、海が見えてきました。山頂を周回できるコース案内板もあります。
山頂は春らしく霞がかっていますが、海と真鶴半島が見渡せます。桜の木もあり、あと1週間もすれば開花しそうです。ここで海を眺めながらのお花見は贅沢ですね。梅と桜の間、幕山の春がゆっくりと過ぎていきます。
【幕山山頂】
海を見ながら下山します。細く伸びる真鶴半島の形が見えますね。季節によって海の色、周りの緑の変化も楽しめそうです。ゆるやかな登りの道と比べると、やや急な坂を下っていきます。見落としてしまいそうな足元にも、スミレが咲いています。
【真鶴半島を見下ろす】
【紫色のスミレ】
30分ほど下った後に、梅林まで戻ってきました。垂直に山を刻むモノトーンの岩壁を背景に、梅の蕾が浮かび上がります。
【梅林と岩壁】
幕山は箱根火山の一部に属しています。この特徴的な岩壁は地表に露出したマグマが冷えた際に収縮し、規則的な割れ目が生じる柱状節理です。幕山の名は岩壁が幕のように見えるところからきていますが、光が感じられる梅の開花時期には、文字通り春の幕開けの光景に見えそうです。
帰りはミカン畑を眺めながら、鍛冶屋バス停まで歩きました。時折、ミカンの軒先販売があって、近所のスーパーと比べると格安です。購入希望の方はリュックの容量の考慮と、小銭を用意してお出かけくださいね。

&Green 公式ライター
20代後半に連れて行ってもらった低山縦走コースで登山の楽しさに目覚める。一時期体調を崩したが、数年前から関東近辺の低山中心に日帰り登山を楽しむ。コーヒーが大好き。人生後半の暮らし方についてトライアンドエラーの日々。