翡翠色の輝き-プリトヴィツェ湖群国立公園-

アウトドア

ここ最近は遠出もままならない状況が続き、それゆえに遠いどこかへ、旅への想いも以前とはまた違うものに感じられます。

忘れられない旅の記憶のひとつに、クロアチアのプリトヴィツェ湖群国立公園があります。1週間ほどの旅行最終日の前日で、1日をかけてかなりの距離を歩きながらも、蓄積していた旅の疲れが少しずつ抜けていくような感じがしました。

どの季節でもそれぞれの良さがありますが、緑のまぶしい今の時期には、エメラルドグリーンの湖も一層濃く輝きます。

プリトビィツェ湖群国立公園は、大小16の湖と92ヵ所の滝を含む一帯で、敷地面積は294.82㎢にもなるクロアチアで最も大きな国立公園です。エリアは標高の高い静かな上湖群と、迫力ある滝を見ることができる下湖群に分かれています。一番標高の高いプロシチャンスコ湖(637m)から低いサスタヴツィ湖(483m)まで、湖、川、滝に姿を変えた水流で結ばれています。

前日に沿岸の街ザダルからバスでプリトヴィツェ入りし(所要約2時間10分)、公園まで行けるバス停の近くに宿泊しました。この他首都のザグレブからもバスも出ています。(所要約2時間30分)入口は下湖群側とコズィヤク湖手前の公園入口の2個所にあり、チケット料金(園内を周遊するエコロジーバスと遊覧船の料金込)※開園時間は時期によって異なっています。

下湖群側の入口から入園すると、早速迫力ある滝が流れる光景が迎えてくれました。奥に園内で最も大きな落差(78m)を持つヴェリキ滝が見えます。

【湖と滝が連なる山並み】

白い山肌とエメラルドの湖の色の対比が美しいですね。この辺り一帯は、主に水に溶解しやすい石灰岩と白雲岩の地質から形成されています。炭酸カルシウムが堆積した石灰華によって、階段のように天然のダムが連なり、上流から注がれる水流が滝となって、独特の風景を生み出しています。

【カルジェロヴァツ湖側から見たヴェリキ滝】

写真では分かりにくいですが、湖の間には遊歩道がかけられています。ここを渡って、ヴェリキ滝まで向かいます。

【湖】

湖は透明度が高く、魚や湖底の藻がよく見えます。湖面には白い石灰華が広がっています。日本では温泉地などで「湯の華」として知られる石灰華ですが、水を浄化させる働きがあるそうです。

【透き通った湖底】

ヴェリキ滝下に到着しました。季節によって水量や植物が違う表情を見せてくれます。右下に少し見えている岩に登って撮影すると迫力ある写真が撮れるそうですよ。(残念ながら登りませんでしたが)

【ヴェリキ滝を下から見上げる】

来た道を引き返し、分岐点から少し先のシュブリャラ洞窟に入りました。こちらはかなり急な階段が設けられていて、動きやすい靴と足腰に自信がある人向けです。時期によっては通行止めになっている場合もあります。

【シュブリャラ洞窟から見た湖畔】

上湖群へ向かうコースに戻ります。辺り一帯から、絶えず水が溢れ出しているようです。ミルカ・トルニナ滝は公園に寄付したオペラ歌手の名前からきているそうです。

【ミルカ・トルニナ滝】

園内で最も大きなコズィヤク湖には遊覧船の乗場が3箇所設けられています。遊覧船に乗り、ここからさらに上流の湖に向かいました。

【コズィヤク湖を渡る遊覧船】

上湖群は下湖群に比べてプランクトンが多く、湖の色が濃いそうです。あいにく少しくもってきて色はよく分かりませんが、透明度があり、最近倒れたとおぼしき木が浮かび上がって見えます。

ブナとモミの木からなる美しい原生林は、ヨーロッパの中でも多様な植物・生物が生息していることで知られています。配布されたパンフレットには、75種類の固有植物を含む1267種類の植物が生息していると書かれています。中でも蘭の種類は豊富で、確認されたもので55種にもなるそうです。ちなみにコウモリだけでも21種もいるとか。(2016年配布資料より)

【森の木々と鳥たち】

園内の道は整備されています。雨量の多い時期だと水没することもあるそうですが、この日はずっと快適に歩けました。

 

【水流の上に架けられた木道】

公園内で最も優美と言われるヴェリキ・プルシュタヴツィに着きました。草をつたうように幾筋もの水が流れています。

【ヴェリキ・プルシュタヴツィ】

ずっと眺めていると、自然を舞台に流れる水が共演しているようです。水滴が線となり、或いは水流は粒となり、この後も舞台は続いていきます。



【上湖群の水流】

下湖群から上湖群までの散策を楽しんだ後、エコロジーバスでコズィヤク湖前の公園入口まで戻りました。

【エコロジーバスで移動】

公園入口前にはカフェやホテルが立ち並びます。こちらのカフェで名物のマス料理をいただきました。一息ついたところで、再びバスに乗り、下湖群付近まで戻ってきました。バス乗場からは、今歩いてきた湖が眼下に広がっていました。

【眼下の湖】

持ち帰ったパンフレットには季節ごとの美しい写真と共にこう書かれています。プリトビィツェ湖群国立公園の風景は、自然現象により刻々と絶えず変化し続けている、と。

【チケットとパンフレット】

地球の時間軸で考えるなら、人と自然の歴史は最近始まったばかりとも言えます。1979年にユネスコの世界遺産に登録されたこの地は、紛争により危機に瀕したこともありました。遥か昔には名前もなかった土地に、名を付け、価値を見出したのは人でした。時に自然現象より急激に深刻な影響を及ぼすのも人であり、またそれを守ろうと思うのも人です。

あの日、プリトビィツェ湖群国立公園での幸福な時間は、私と自然を繋ぐ、懸け橋のような時間だと感じます。

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