登山に慣れてきた方であれば、いつもと違った冬山の景色を見てみたいと思う方も多いでしょう。冬山登山の大きな魅力は大自然を感じながら登る体験と、待っている絶景ではないでしょうか。
そんな冬山登山ですが、実際に登山に慣れたベテランでも遭難や滑落などの事故を起こします。そこで本記事では、初心者が冬山登山で気をつけたい注意点と必要な装備について、解説していきます。
夏山と環境は大きく異なる
まず大前提として、同じ山であっても冬山は夏山と環境が大きく異なります。標高が高ければ、夏山では無かった積雪があり、季節によって気温や風の強さも異なります。基本的に冬山のほうが夏山と比べて、過酷な環境ということを理解しておきましょう。
例えば、冬山は非常に寒く風の影響もあり、体感温度も下がります。寒さ対策をしていないと、指先や足先などへの血の巡りが悪くなり、凍傷などを引き起こす可能性もあります。また、強い紫外線にも気をつける必要があります。太陽光に注意することはもちろんですが、雪面からの照り返しが強く、「雪盲」といった網膜の日焼けを起こしてしまうので、サングラスやゴーグルが必須です。
ルートも雪で覆われているため、自ら地図で位置を確認しながらラッセル(雪をかき分ける)して進みます。その際、稜線上では雪庇(せっぴ)の踏み抜きに気をつけなければなりません。谷では常に雪崩の危険性が伴います。トラバースも、場所を間違えれば非常にリスクの高い行動となります。ホワイトアウトした場合、何も対策を取らなかったら道迷いや凍死の可能性が一段と高くなります。これらのリスクをより軽減させるために必要なのは、高い判断力、体力、地図読み能力、天候の知識、緊急時の動き、リスクを回避するルートのとり方など、冬山を安全に楽しむためには夏山より遥かに高い総合的な登山技術が求められます。
このように、冬山登山はこれまでの環境とは大きく異なるということを、理解しておきましょう!
冬山登山の魅力
ここまで、冬山の厳しさを伝えてきましたが、冬山登山には大きな魅力があります。それは、冬山でしか見ることのできない絶景を楽しめるということです。登山中は特に厳しい大自然の中を登ることになりますが、これも冬山登山の醍醐味です。このように、日常生活では感じられない体験ができるのです。
冬山登山3つの注意点
環境が厳しい良いことから、冬山登山で気をつけたいポイントがいくつかあります。ここからは、冬山登山での注意点を3つ紹介します。
変化する天候への対応
本記事を読んでいる方であれば、山の天気が変わりやすいことはご存知でしょう。夏山でも登山中に雨が降ることは多々ありますが、冬山になると、気温が低いことから雪や吹雪などに変わります。青空の中登り始めたかと思えば、吹雪で数十センチ先が見えなくなるということもあります。このように急変する天候に対応する必要があるのです。
知識を付けることはもちろんですが、実際に経験のない登山者だけでは、パニックになることもあるので、冬山登山の経験者と登りましょう。
適切なウェアの選択
冬山登山では、天気が良ければ汗をかくほど暑い環境ですが、天気が悪くなれば吹雪に見舞われることもあります。このような場合、急激に気温が下がるので、レイヤリングの考えをもとに適切なウェア選択が重要となります。また、冬山用に必要な装備もあるので、記事の後半で解説します。
適切なルート確認が必要
冬山では、通る事そのものがリスクとなる場所があります。それは自身が遭難してしまうことはもちろん、自身が通ることによって他人を遭難させてしまうようなリスク(誘発雪崩)もあります。それらの知識をしっかりと有し、できるだけリスクを減らしていくことが求められます。
体力が必要
先ほどもお伝えしましたが、冬山は厳しい環境です。足元が悪いことや気温の変化が激しいことなど、さまざまな外部要因から、体力を奪われます。また、夏の登山と比べて装備も多いので、重たい荷物を抱えながらの登山になります。このようにいつも以上に体力を消耗するので、冬山に上る前に体力をつけておきましょう!
冬山に必要な装備
冬山登山では、無雪期と異なり必要な装備がいくつかあります。ここからは、冬山登山に必要な装備について少しだけ解説していきます。
サングラス
太陽光が強いことや雪面からの照り返しによって「雪盲」といった網膜の日焼けを起こしてしまうため、サングラスが必要です。吹雪の時などはゴーグルを着用します。
グローブ
防水性のあるアウターと保温性のあるインナーで分けて使用しましょう。手先が冷えると凍傷になる危険性もあり、濡れたままのグローブは避けたいので、インナーは予備を携行しましょう。
ピッケル
傾斜のある雪面を登る際のサポートや滑落を防ぐことにも役立つ、冬山登山に重要な装備です。支点として使用することも出来ます。自分の身長に合ったものを選ぶことはもちろんですが、使い方にも慣れておきましょう。ピッケルは、一歩間違えれば怪我の原因にもなるので、持ち方などにも注意が必要です。
スパッツ(ゲイター)
靴に雨や雪が侵入し体温が低下するのを防いでくれます。ゴアテックスなどの防水性と耐久性が高い素材を選びましょう。
アイゼン
凍りついた雪面の上を歩く際に、靴底に装着する金属の爪がついた冬山登山に必須の装備です。低山のトレッキングであれば、4本から6本爪のアイゼン。それ以上の冬山であれば前爪のある10本から12本爪のアイゼンを選びましょう。トレースのない深い雪ではツボ足(ワカンやスノーシュー無しでラッセルすること)で進むのではなく、ワカンやスノーシューとの併用も効果的です。
ビーコン
雪崩に巻き込まれた遭難者を探す、探してもらうための道具です。常に微弱な電波を発することで、数メートル以内の範囲で存在位置を感知することが出来ます。使用方法が難しく、適切に使用するには講習が効果的です。高価格なので、シーズンレンタルを利用するのがおすすめです。
プローブ
雪深の測定や、雪崩遭難者の救助に使います。雪洞ビバークの際には雪洞の上に立てておくことで「この下に人が寝ています」というサインにすることが出来ます。
ショベル
救助での使用はもちろん、テント設営や雪洞作成、雪を活用した支点構築に使えます。
まとめ
いかがだったでしょうか。本記事では初心者が気をつけたい冬山の注意点と、必要な装備について解説してきました。冬山は夏などと環境が大きく異なります。装備選びは、ネット上で調べた情報だけで購入するのではなく、ショップの知識のある方にアドバイスをもらいながら選ぶことをおすすめします。
【 この記事を書いている人 】
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